アングレカム-Angraecum Leonis-

第三十八話見つからない君



 神社から河川敷に連なる、屋台を走りながら、さくらを探す。
 こんなところ、無闇矢鱈に探してもさくらは見つからない。
 どこか。どこか、さくらの行きそうなところ……。

「……くそ、あいつ……どこ行ったんだよ……!」

 辺りを見渡しても、見つからない。
 こんな時に、りゅうのすけは花火大会の少し前に一緒に映画を観に行って、ご飯を食べに行ったあの日を思い出していた。
 あの時のさくらの笑顔を。
 あの時一緒に居た時間の心地良さを。

 あの時に見た、さくらの幸せそうな顔を。
 りゅうのすけは思い出していた。

(……どうしたんだよ……どこに行っちまったんだよ……)

 神社の南口に来たけど、どこにも居ない。
 東口に行っても。北口に行っても。西口に行っても居ない。
 もうからこれ二十〜三十分くらいはずっと走り回っていた。

「……さくらーーー……っっ!!!!」





 ある程度泣いた後に、こっそりと母達の元を離れて、ゆっくり歩いていた。
 なんでこんなに泣いているんだろう。
 りゅうのすけとみうがくっ付く事はめでたい事だろう。
 これは決して嬉し泣きではなかった。
 さくら自身もそれだけは分かっていた。

 (……………………)

 ボォーッとしながら、多くの人達が賑わう屋台の道を抜けて、ただひたすらに歩く。
 この涙の意味は。この気持ちの名前は。
 自問自答をしながら、ただただ歩く。

「……みうちゃんとりゅうくんが……幸せになる……それの何が悲しいの……?」

 少し胸が痛くなって来た。胸を押さえながら、また出て来た涙を自分の手で拭い取る。

「……なんで……なんで……」

 なんで、こんなにも涙が出て来るのだ。
 悲しい気持ちにも襲われてしまう。
 そうだ、この気持ちは、悲しいのだ。
 何故、悲しいのか。
 さくらは、どれだけ脳を回転させてフル活用しても分からないままで居た。

 近くにあった屋台で、アンパンマンの風船を見
つけた。
 可愛いな、と呟きながら、また歩いた。





 かんなと、りくの面倒を見ながら、くうどうはさくらの心配をしていた。

「まったく。さくちゃんはどこに行ったんや」

「あの子ももう高校生でしょ。その内家に戻って来るって」

「まあ、泣いてましたし。何か思い詰めて……とか、ないかなって心配で……。てか、さくちゃんの親なんだからもう少し心配したら……」

「んまぁ、あの子は確かに繊細な所もあるけどね。そんなでも私の子だから、強いところもある。だから、きっと大丈夫や」

「……分かりました。俺はこのままかんなとりくの面倒見てます」

「その方がきっと良い。さくらに気を取られて、その子らになんかある方が私としては心配だし」

「確かにそうですね……」

「それに、こんなだだっ広い祭の現場を探し回るんは、しんどい。りくと一緒にアンパンマンコールしたら戻って来るやろ、あの子あの歳で人一倍アンパンマン好きやし」

「……くそ、この人、おもろい……」

 どこか、負けた気がしたくうどうであった。





 ひるあきとみうは、ベンチに座り込む。ひろあきは泣いていたみうの落ち着きを待っていた。

「みうちゃん、落ち着いた?」

「……うん……」

「ほんま? 良かった。喉乾いてない? とりあえずなんか飲む?」

「ありがとう、ひらあき。でも、私さくちゃんも心配になって来た」

「……それも、そうだね……」
(……ここで、りゅうくんが探しに行ったから、大丈夫だとか言ったらまた泣きそうだしな……)

「ひろあき、みうもさくちゃん探しに行く」

「……え! あ、うん。分かった。行こう。とりあえず喉乾いたし、自販でなんか買おう」

「……うん。そうやね。みうも喉乾いた」

 そう言い、二人は立ち上がって、自動販売機へ向かい、適当な飲み物を買う。

「どこ探す……?」

「多分、方向的に、りゅうくんは神社の東西南北。それぞれの出入り口を探しに行ってるやろうから。俺らは、河川敷の方に行こう」

「うん、分かった!」

(……よかった……! ホントに少し落ち着いたみたいやな……!)
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