アングレカム-Angraecum Leonis-

第四十話火花の奏でた音色達



 りゅうのすけから、さくらを見つけた、という連絡を聞いて、くうどう達はりゅうのすけとさくらと河川敷で落ち合う。

 そこにみうと、ひろあきも居合わせたので、そのままみんなで一緒に花火を見ることになった。

「ひるあき、お前の花火、もう打ち上がったか?」

「いや、まだだよ。もうそろそろ。良いタイミングだよ」

「そっか、楽しみだな」

「うん!」

 そうして、ひろあきのデザインした花が空に浮かび上がる。
 浮かび上がった花火は、向日葵を描いていた。

 空に描かれた向日葵の花は、見事なまでに美しさを奏でている。
 向日葵の花言葉は、憧れ。ひろあきは一つの憧れがあった。それはりゅうのすけの存在だ。

 りゅうのすけが居るから自分が居る。口が悪くも、優しい、カッコいいりゅうのすけにいつもひるあきは憧れていた。

「おお、凄えな」

「……想像以上やったわ……」

 そんな秘めたる想いは、気恥ずかしくて言えやしない。気持ちが悪くて言えやしない。
 ただ、こうやって、みんなとまた一緒にこの夜空を見上げる事が出来ただけでも、ひろあきは幸せで、みんながその花火を見て喜んでいるだけで幸せだった。

 このまま、みんなと仲良く過ごせたらなぁ、とそう思いながら、ひろあきは花火と一緒みんなの姿を見ていた。





 少し離れた場所でも、花火の話で持ちきりで、綺麗だなんだのと大盛り上がりである。

「花火……綺麗……」

「……まや、お前の方が……綺麗やで……?」

「……ひな……そ、そんな事ないわよ……」

「俺にとっての、花火は……お前だけやで……?」

「きゃー!」

「ひなちゃん、イケメン」

 まきとゆうかが興奮気味に楽しんでいる。

「なーんつってな。ひなもいつかこんな事イケメンに言われたいわ」

「ほんまやなぁ……。ひなちゃんならいつか言われるかも知れんけど……でもみんなとこうして観れた花火もうちは好きやで」

「まや姐さん! そんなん、当たり前やんか! ひなも好きに決まってる」

「今度は全員集めて観に来てみる?」

「来年はそうしてみる?」

「……来年まで、続いてるとええなあ。この関係が……」

「大丈夫やろ! 最強メンバーの集まりやで? そう簡単に壊れへんて」

「そやね。またみんなで来よう」

 しんみりとした空気の中、空を見上げていると、聞き覚えのある声が聞こえて来る。
 声の主はあきせだった。

「おー、やっぱりまきちゃん達やったか」

「男達だけで寂しく花火大会終える前に美人達を見つけれてよかったな」

「……は? 美人? どこに? 誰が?」

「せいやくんキラーイ!」

「はーい、キラーイ!」

「るいくんも来てたんやな」

 ゆうかはせいやの隣に立つるいに話し掛ける。

「ヤクザの誘いは断れんでしょうよ」

「ヤクザはわろた」

「おいおい! るーい! 誰がヤクザや! コラ! 暇してんなら花火大会行こうやって誘っただけやろ!」

「名指しで言ってないのに反応する辺り、自覚してる?」 

「お前なぁ……」

「まあ、ヤクザは言い過ぎやって。な、ヤンキー」

「ひなちゃん! ヤンキーもちゃいますて!」

「ハハハハハ!!」

 盛大な笑いを花火に負けない程の大声で響かせて、今宵の思い出が新たに作られた。
 世界にひとつだけの思い出を。
 みんなそれぞれ違うメンバーで集まっているのに、少しだけ離れた距離で、みんな河川敷で空を見上げている。
 心が通じ合っている証拠なのかもしれない。




 さくらが空を見上げながら、「キレー」と呟いていると、隣に居たりゅうのすけが、さくらの顔を抑えて、キスを交わして来る。

「……!! ……りゅうくん……?!」

「夏の思い出が一つ出来たな」

「……もう……」

 他の皆は、空を見上げていたので、何が起こっていたのか、誰も気付いていない。
 そうして、しばらく花火を見続けていると、花火大会のメイン、花火は打ち上げ終わり、空はパッと暗くなった。
 周りに居た人々は、騒めきながら、帰宅路を辿る。

 さくらも、りくとかんなと手を繋ぎながら、帰路を辿った。

 かんなはりくと仲良くなった事でこのまま別れる事をぐずり出す。その様子を見たさくらの母が「今日泊まって行きなさいよ」と声を掛ける。

「そ、そんな! 悪いですよ……!」

「私も、かんなちゃん好きになっちゃったから、まだ帰らないで欲しい! ってなっちゃった! かんなちゃん、うちに今晩だけ泊まりに来てくれる?」

「え、いいの? いくー!」

「やったー! って事でくうどう君、決まりました!」

「…………」
(……この人には一生敵わん気がする……)

 かんなが急遽さくらの家に泊まる事となった。その事でくうどうも着いて行く事が決まりさくらの母に「急にすんません」と頭を下げる。

 そう言うさくらの母は笑顔で、「かんなちゃんもその方が嬉しいでしょ? もし、これから先かんなちゃんの事で困った事があったら、ウチに来なさい。力になるから」と答え、くうどうは、泣きながらお礼を言い、さくらの家へと、足を前への動かした。

「おい、ひろあき! みーちゃん! 俺らも一緒に泊まろうぜ」

「え、そんな急に!?」

「りゅうってば……ほんと、自由なんだからー」

「かんなちゃん、りくくん、一緒にゲームしようぜ!」

「かんな、げーむするー!」

「やるやる!! にーちゃんつよいの?」

「あぁ、最強だぞ?」

「すげ~!」

 その光景を見ながら、さくらは、クスリと笑いながら、さっきまで泣いていた事を忘れ去っている様子。

 大好きな人と一緒に花火を見た者。
 親しい友人と一緒に花火を見た者。
 愛する家族と一緒に花火を見た者。

 様々なシチュエーションで見た花火は、見る者全ての景色を変え、見た者全てに刺激を与える。
 今年の花火大会はもう終わり。

 でもまだ夏は終わらない。
 まだまだ、今年は終わらない。


アングレカム-Angraecum Leonis-
これにて開幕。
著者 さか。
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