アングレカム-Angraecum Leonis-
第六話夏の図書館
夏の日差しが身体を照らしていじめてくる。何もしてなくても汗が流れてくる。
暑い事という嫌悪感と、汗が身体中から流れる嫌悪感。ダブルパンチをされながらもひろあきは公園を通り、いつも行く図書館へと歩く。
「いやぁ、嫌になるとかより、
溶けそうなくらいに暑いな……」
被っていたキャップをより深く被り直し、道中にあった自動販売機でスポーツ飲料を購入する。その自動販売機に売っていたのはアクエリアスだった。
「近くにあった自販機がコカコーラでよかった。
今めっちゃアクエリ飲みたかったんよな」
そう独り言を言いながらひろあきはそのままアクエリアスを購入し、ペットボトルの先端部分にあるキャップを握り締めそのまま捻るように回し、キャップを開けた。
ゴクゴクと勢い良く飲み、一息吐く。
少し多めに飲み、大半を残し、キャップを閉めてアクエリアスを持っていたリュックの中に閉まった。
持って来ていたタオルで汗を拭い、彼はまた図書館へと道路を歩み始める。
真っ青に染まり、どこまでも広がっていそうな青空を見上げながら、「いい天気なのはいい事だな」とそう呟いて横断歩道を渡った。
数分後に辿り着いた図書館は正に天国のような場所だった。猛暑で地獄と化した街から、クーラーの効いた広々としたこの部屋に入って、適当な席を探して背負っていたリュックを適当にテーブルの上に置き、そこに座り込みひろあきは一息吐く。
さてと、と吐くように言いテーブルの上に置かれたリュックを自分の足元へと移動させて、適当な本を探しに席を立ち上がる。
少し調べ事がしたかった。その為にココに来た。ひろあきは静かに目当ての本が数冊程置いてそうな箇所を探す。
キョロキョロとしながら、数十分と時間が経ったがなかなかに見つからない。
やはり無謀であったか。そんな事をふと考えながらも、まだまだ、もう少しだけ、探そう。そう考えながらこの広い市立図書館の中をトボトボと歩き出した。
もうしばらく探していると、ひろあきはクラスメイトと遭遇する。短髪に整えられ、爽やかに輝く笑顔をする、るいだった。
「あれ、ひろあき? どうしたの。なんか探しモノ??」
「あ、るい。奇遇だね
うん、まあね。そんなとこ」
「何探してんのさ?」
「んー、えっと……」
「魔術本でしょ!!」
ひろあきが何かを言いそうなタイミングで後ろから突撃するかの如く人がやって来た。
その人は女の子だった。ひろあきのクラスメイトであり、友人の一人である。
彼女の名前はなお。肩甲骨以上にまで伸ばされたサラサラな綺麗な髪を靡かせながら輝かしい笑顔でひろあきを見ている。
「……魔術本?」
「私今魔術本探してたの」
「いや、それなおちゃんの探しモノでしょ!」
「うふふ、冷静なツッコミありがとう。
さあ、ひろあきさん、るいくん。
共に魔術本を探し当て、
共に魔術を学ぼうではないか!
その昔世界にはウイッチ、という概念が
存在してたとかしてないとか――」
「あのボク、普通に勉強に来ただけやねんけど」
るいがなおの言葉を遮り、持っていた勉強道具一式を見せつける。
「俺も少し気になる事があって。
それで花火に関する本を探してたってだけで……」
ひろあきはそう言いながら、頭を掻く。
「多分ね、魔術本はね、
あっちの方にあったと思うんだよ」
「話聞いてなおちゃん。1mmも聞く気ないじゃん」
「なおね、錬金術とかも気になるんだよね。
あと、軍服が載ってる本とか無いかな。
それしばらく眺めてたい。」
「マイペースか」
「これは放置した方が良さそうだな
ところでどっこいひろあき。
なんで花火の本なんかを?」
「あぁ、今度花火大会あるやん。
それで少し気になったんよ。花火の作り方について」
「あぁ、なるほどね。なんか、花火大会の事件とか
あったのかと思っちゃったよ」
「……事件? なにそれ。」
「いや、ただの推測だよ。なんかあったんかどうかはボクも知らないよ」
「花火の作り方とかより、
人間の造り方とかに興味は無い?
魔術と錬金術を融合させて、
人間を造ったらどうなるのかしら
ほら、錬金術だと無から有は作れないけど、
魔術ありきなら――」
「とりあえずしばらく探したけど見当たらないし、
入口付近にある本を検索出来る機械でも
使って探してみるよ」
「その方が賢明だね」
るいはそう言い、ひろあきについて行く。
「おいおい〜〜! 冗談だっての! 無視すんなよー!
休みの日に君ら同級生と会えて嬉しいから
言った冗談だっての!
分かれよ! もう〜〜! ごめんな!」
「はは、冗談でよかったよ。
なおちゃんは夏休みになってもそんな感じだろうね」
「あと数日学校行くだけで
夏休みが来るのも
テンション高い要因の一つでもあるぞ!」
「もうすぐ夏休みかーー」
人の多さと図書館の割に少し騒がしいこの部屋の中は3人の騒がしさに気に留める人なんていやしなかった。
3人はそのまま入口付近にある本を検索出来る機械へと足を運び、お目当ての本を探す。
本を見つけだし、花火に関する本を数冊、ひろあきはそれを手に持ち荷物を置いたテーブルへと戻り、るいとなおと3人で各々円の形をしたテーブルを囲うように座る。
「実は知り合いの人に花火職人の人が居て、その人に花火を作ってみないか?って誘われてさ
どんな形の花火を作るにはどんな風にしたらいいのか、ってなったら気になって
職人の人らに聞いても分かんないとこ多いと思うから、自分で事前にある程度の知識付けときたいってのと、色々な事知っときたいと思って」
ひろあきはそうツラツラと話す。
「魔法陣とか作れるんかな
錬成陣でもええんやけど」
「……分からんけど、作ったやつ今度の花火大会で打ち上げてもらう予定なんやけど……」
「いいじゃん! 街の夜空に魔法陣or錬成陣!
カッコイイ!! Cool! ヒュー!」
「……ひろあきがなに作りたいか決める権利はないのね……」