アングレカム-Angraecum Leonis-
第七話告白予行練習
学校の昼休みになり、授業が終わった生徒達はゾロゾロと動き出す。
その中でみうは一人溜息を吐いていた。
「はぁ〜〜」
「どしたん、みうちゃん。もしかして恋のお悩み?」
「実はそうなんよ、まきちゃ〜〜ん〜〜!!」
まきにハグをしながら悩みがあると訴えるみう。それを聞きつけた二人の女子が弁当箱を持ち、みうに近付く。
一人の名は、ひな。背はそこまで高くもなければ低くもない。顔はそこそこ整っている。腰にまで伸ばされたストレートヘアが良く似合う自称石原さとみ。
恋の話となればひなが居ないと始まらないと言われんばかりの女である。
もう一人の名はまや。形付かない程度に切り揃えられた髪が良く似合う通称魔性の女。
恋の悩みはまや様へ。そう言われ、次々と恋の相談をする女子達男子達が絶えない恋のスペシャリストである。
「あ、ひなちゃん、まやちゃん!
二人も一緒にお昼ご飯食べる?」
「こぉ〜ら!まきこ?
私の事はさとみって呼びなって言ってるでしょ?」
ひなはそう言いながら髪を手でサラリと靡かせる。
「あ、ごめん! さとみ!」
「みうちゃん、恋で悩んでるようね。
大丈夫。私達が来たからにはその恋」
「さとみ&まやで解決、させちゃうよ〜?」
「さとみ、まやちゃん! ありがとう〜〜!!」
四人は席をくっ付け、各々弁当を開きながら話を進めて行く。
「……うんうん。なるほどね。
幼馴染でもあるりゅうくんのことが好きだけど、
全く相手にされないと。」
「さとみ的には〜……
その恋応援したいかなぁ〜〜っつって?」
「もぐもぐ。ごくん。……りゅうくん変なとこあるけど、なんだかんだで顔が良いってので人気が高いからなぁ〜」
「さとみ的には〜、まぁ確かにりゅうくんはイケメンだとは思うよね〜」
「確かにね。人気は高いからいつの間にか誰かと付き合ってるかも知れないよね」
まやはそう言いながら、弁当のウインナーを齧る。
「うぅっ……それはヤダな……」
「はむっ、モグモグ。まぁ、でもりゅうくんの事やから彼女とか作らなさそうな感じもするよねー。知らんけど」
まきは無責任な台詞を吐きながら弁当を貪る。
「さとみ的には〜……あの子普段おふざけキャラな所があるしなぁ。かずきくんとかとよくふざけて暴れてる
イメージがある。でも、りゅうくんって、意外と真面目な所があるからそこに惹かれる人も多そう。あ、ひなは、あ、ちゃう……ごほん。さとみは別にそんなん考えた事もないけどな〜」
「確かにね。あの子、子供っぽい様で大人なとこもしっかり持ってるよね」
「そうなんよな……りゅうカッコいいんよな……。あぁ……花火大会に告白しようって思ったけど……やっぱりやめようかな……」
「え! 花火大会で!? それはいいと思う! うちらも協力したい!」
「花火を見ながらの告白……ロマンティックやん……」
まやはニヤリと笑い、視線をみうに送る。
「ええやんそれ。とりあえずひならで告白の練習でもする?」
「え、告白の練習?……でも確かにみうもなんて言えばいいんかわからん……」
「しゃあないなぁ。恋愛初心者みうちゃんよ。ひながお手本見せたろかー?」
「きゃ! 夏のビッグイベントの予行演習やな! 楽しい!」
「とりあえず、ひなちゃんがみうちゃん役、まきちゃんがりゅうくん役でやってみよ」
まやはそう言いひなとまきに指示を送る。
「おーけい
やったろうやないか」
「私ににりゅうくん役出来るかどうかは分からんけど、みうちゃんの為に頑張りましょう」
「よし、じゃあ早速スタート」
どことなくそれっぽい雰囲気だけがその場に流れ出す。無駄な緊張感が彼女達の辺りを覆う。
「……人混み、凄いね〜」
ひなは目線をまきに向け、変なイントネーションで喋り出す。
「そ、そうだね、いや、そうだな!」
まきは変な緊張感から言い間違えてしまう。
「ここ、蚊多いね〜〜」
「……ん? う、うん、そうだな」
「……じゃかじゃんじゃんじゃん、す〜きですす〜きです心から〜愛していますよ〜〜と〜〜♬」
「カーット!! カットカット! ひなちゃん!?」
「はははは!!」
「あっはっは!はは!待って、お腹痛い!」
まきとみうは二人して盛大に大笑いする。
「え? 良くない? ひな的には歌に想いを乗せて相手に届ける的な?」
「だからと言ってなんで長渕剛の巡恋歌をチョイスすんの」
まやは冷静にひなにツッコミを入れる。
「え? 純恋歌めっちゃ良い歌やん? ほんでな? もし振られでもしたら、こーんなにすーきにさせといて〜〜! 勝手に好きになったはないでしょ〜〜!? ってな感じで」
「ふふふ、ふぐっ、あははは! ちょっ、待って! ひなちゃんヤバい……」
「あは、はぁ、はぁ、ははは! もうやめて……」
「え、めっちゃよくない? ひなとしては、相手に気持ちを伝えるにはこれが最適解かと!」
「……あ、いやあの。うん、面白さは満点です。でも告白するには0点です……」
まやは苦笑しながらそう言い弁当の卵焼きを食す。
「えー! なんでよ!」
「ゴホンッ! さて、気を取り直して。もう一度やろうか。ひなちゃん、まきちゃん! 改めてスタート!」
そして改めて流れ出すそれっぽい雰囲気。今度はどことなく重苦しい気がして来る。かも知れない。
「……花火、綺麗だね?」
「……うんっ」
「…………ねぇ、りゅうくん?」
「……ん? みう、どうしたの?」
「……好き(→)だ(↓)よ(⤴︎)〜?」
「ブッ」
まきはひなの独特なイントネーションに思わず吹き出してしまう。
「ストーップ!」
まやは即座にストップを入れる。
「あははははは!!!! なにそのクセの強い好きの言い方……あはは!」
みうは大笑いしながら、体を震わす。
「あれ、今のは普通によかったくない?」
「なんで、好きだよの「よ」で口角上がんの……」
「へ?」
「ダメや……ひなちゃん自身ずっと真面目にやってるつもりやからこれ以上あんま言えへん……」
告白の練習はその後しばらく続き昼休みが終わろうとする頃、4人は弁当を食べ終えてない事に気付き、急いで弁当を食べた。
果たして、みうの告白は成功するのだろうか。