野いちご源氏物語 五二 蜻蛉(かげろう)
(みや)様は侍従(じじゅう)参上(さんじょう)したとお聞きになっただけでお心が震える。
気まずいので中君(なかのきみ)にはお知らせなさらず、ご自分のお部屋でお会いになった。
最期(さいご)の様子をお尋ねになる。
「姫様はもうずっとお苦しみでいらっしゃいました。宮様と(かおる)(きみ)の間で、(いた)(ばさ)みになってしまわれたのでございます。宮様を追い返すようになってしまいましたあの夜は、本当につらそうにお泣きでした。

おひとりで思いつめてしまわれまして、お胸のうちを誰にもおっしゃいませんでした。(かく)したいというお気持ちが強かったためでしょうか、とくに言い(のこ)されたこともございません。ですから、まさかあんな恐ろしい決意をなさっているとは夢にも思いませんでした」
浮舟(うきふね)(きみ)宇治(うじ)(がわ)()()げしたようだと、侍従はお話しした。

<自殺か。どれほど思いつめてそんなことをしたのだろう。見つけて止めたかった>
あの日に戻りたいと思われるけれど、もう無駄(むだ)よね。
「お亡くなりになる少し前、宮様からのお手紙をお焼きになっていたのです。そのとき気づいておりましたら」
侍従は一晩(ひとばん)かけていろいろなことをお話しする。
女君(おんなぎみ)母君(ははぎみ)()てて書いた手紙のことなども申し上げた。
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