この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

どれくらいそうしていたのか、自分でもよく分からなかった。
涙はいつの間にか落ち着いていて、呼吸も少しずつ整っていく。


それでも顔を上げるタイミングが分からなくて、私はしばらくそのまま画面を見ているふりをしていた。


背中にあった手は、気づけばもう離れている。
最初からそこになかったみたいに、何事もなかったように。

隣では、キーボードの音がさっきよりも速い音を出していた。
一定のリズム。迷いのない音。

それが妙に現実的で、さっきまでの自分が少しだけ遠く感じる。


「すみませんでした」

ようやく声を出す。
思っていたよりも普通の声で、自分でもそこにびっくりした。


高橋さんは手を止めないまま、

「べつに」

と短く返してきた。ただ、それだけ。

何も聞いてこないし、何も触れない。
さっきのことを、わざわざ拾い上げたりもしない。
その距離感に、ほんの少しだけ、救われる。


私は一度だけ鼻をすするふりをして、それから画面に視線を戻した。

「…ここ、修正入れます」

「うん」

「この順で詰めた方が早いですよね」

「そうだな」

会話は、ちゃんと成立する。
いつも通りに近い形で。
それがちょっぴり不思議で、でもありがたかった。


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