この恋、予定外。
「このあたり、触られてる割に減りが遅いですね」

「あー、試すけど買わないやつね」

店長がハズレを引いたみたいな苦笑いを浮かべる。
その横で、高橋さんがぽつりと口を挟んだ。

「重いんじゃないですか」

「…え?」

「仕上がり、です」

彼の短い言葉に、店長が「ああ」と納得したようにうなずく。

「たしかに夕方にテカるって言われることあるな」

私はその流れをそのまま引き取った。

「この価格帯だと、軽さを前に出した方が選ばれやすいと思います。試したときの印象と、時間が経ったあとの差が小さい方が」

店長が腕を組んで、少し考えるように顔をしかめる。

「なるほどね。それなら動くようになるかな?」

「試す価値は絶対アリです!」

軽い確認で会話は終わる。深く踏み込む必要はない。ここは、現状の把握と方向の共有で十分だった。


「またお願いしまーす」

と言ってお店を出ると、お昼の空気が少しだけ重くなっていた。


「次のお店は、ここより少し離れてます」

私が持っている手元の資料を覗き込んだ彼が、めんどくさそうに眉を寄せるのが見えた。

「…遠いな」

そんなやり取りを交わしながら、ふたりで歩き出す。隣を歩く気配に、特に意識を向けることもなく、そのまま次の店へ向かった。




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