この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

三件目は、ショッピングモールの一角にあるコスメセレクトショップだ。
明るすぎない照明と、余白を残した棚の並び方が、これまでの二件とは明らかに違う空気を作っている。


「こんにちは。朝比奈の森川です」

軽く声をかけると、店員は一度こちらを見て、小さく会釈を返しただけで、それ以上は踏み込んでこなかった。

ある程度、自由に見ていい店だと分かる。


私はそのまま売り場に視線を移す。

フェイスパウダーの棚。価格帯はばらばらなのに、減り方は偏っている。
中央の一角だけ、明らかに動きが違う。
すぐに手に取る。

パッケージの質感、ロゴの配置、色のトーン。
既視感が、すぐに輪郭を持つ。

「…似てるな」

隣から落ちてきた声に、思わずうなずいた。

「ですよね。デパコスの、バズったあれに」

ケースを開く。粒子はそこまで細かくない。
けれど、完全に劣っているとも言い切れない、曖昧なライン。

「でも、これ…」

言いかけて、少し考える。
売れている理由は、“似ている”だけじゃない。

「売れるの、分かる気がします」

そう言うと、高橋さんは特に驚くでもなく

「なんで?」

と単純に聞いてきた。
試すような声ではない。ただ、続きを待っているだけの声。


「完全に同じじゃなくても、“それっぽい”って分かれば十分なんだと思います。日常で使う分には、困らないレベルですし」

言いながら、もう一度棚を見る。

「それで、この価格なら、選びやすい。パケも中身もこんなに似てるなら…」

「やっぱ価格だな」

< 114 / 180 >

この作品をシェア

pagetop