この恋、予定外。
食い下がる私に、彼はだるそうな声ではいはい、と受け答えする。

「じゃあ明日にでも09渡すよ。つい最近できたばっか」

「改良版ですね!もしかして、試すの私が初めてですか!?」

ウキウキしてしまってその嬉しさを隠せずにいると、隣からまたふと笑う気配。

「おもしろいな、森川」

「え?」

「ころころ表情変わって。おもしろ」


笑ったのが嬉しいのか、試作09を誰よりも早く試せるのが嬉しいのか、どちらか分からなくなった。


人の流れに紛れながら歩き出すと、さっきまでの会話が少しずつ遠ざかっていく。

「これで今日は終わりだな」

隣から落ちてきた声に、私はうなずいた。
もう、街は完全に夜の顔だ。

「はい。三件分、まとめて社内に共有します」

「あ、今日は直帰でいいって言われてる」

「えっ、そうなんですね」

言われて、少しだけ肩の力が抜けた。
思っていた以上に、体に疲れが残っていたことに気づく。


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