この恋、予定外。
「…ありがとうございます」

受け取りながら、視線を落とす。
ちょっと悔しい。

やっと全部拾い終わったと思ったところで、高橋さんが私の手の中にまだあったアイシャドウパレットを見た。

「それ、直せるぞ」

「え?」

「アイシャドウ」

「ほんとですか!?」

「ティッシュで押せば戻る」

「…やったことあるんですか?」

露骨に、変な声で聞いてしまった。

「妹」

短い一言。
それだけで妙に納得してしまう。

私はもう一度、手の中のアイシャドウを見る。

「…家でやってみます」

「ラーメン屋でやれば。どうせまた落とすだろうけど」

「落としません!」

またしても反射で即答してから、少しだけ間が空く。視線も泳いでしまった。

「……たぶん」と小さく言い直すと、また笑われた。

「だろうな」


高橋さんが立ち上がる。

「入るぞ」

「はい」

慌てて立ち上がる。
さっきまで泣きそうだったのに、もうなぜか少しだけ笑いそうになっている。

「……もう」

小さくこぼす。

「なんなんですか、ほんと」

その背中を追いかけながら、私はまだ少しだけ熱の残る頬をそのままにした。




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