この恋、予定外。
「…あ、アイシャドウ」

ふと思い出して、ガサガサとポーチを開く。また弾け飛んだら嫌なので、今度は慎重に。

「今やるのか?」

「さっき高橋さんが言ったんですよ、ここでやればって」

アイシャドウパレットを開くと、四色のうち二色が割れていた。悲惨な現実についていけなくて、目の前に突きつけられたようで落ち込む。

「買ったばっかなのに…」

ティッシュで地味に押し続けるも、粉々になった部分が固まる気配はない。

「無理かも」

ぽつりとこぼすと「貸して」と隣から手が伸びてきた。

一瞬だけ迷って、

「…お願いします」

と私と彼の間に置く。
パレットの状態を確認した彼は、さっきのティッシュで粉々になっているところをさらに粉にした。

「えーっ!ちょっと大丈夫ですか!」

「そっち押さえてろ」

騒いでいた口を、慌てて塞ぐ。
パレットを押さえていると、指が触れた。

…近い。

「動かすな」と、低い声。

「は、はい!」

こちらの動揺はお構いなしに、彼はティッシュで軽く押さえていく。手つきは意外と丁寧だった。


「…ほんとにやったことあるんですね」

「だから、妹」

彼の妹も、私みたいに色々落とすのだろうか。
擦れ合う指が、ちょっとじれったい。

距離は、近いままだった。


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