この恋、予定外。
「お、おい!兄ちゃん大丈夫か!」

カウンターの向こうから、店主の声。

同時に、湯切りの音が乱れる。
ざばっとスープが跳ねる音。

「あっぶね!」という熱そうな声も聞こえた。
たぶん、一番大丈夫じゃないのは店主かもしれない。


「……あ、…だいじょぶ、です」

高橋さんは咳き込みながら手を上げる。


狭い店内だ。
周りのお客さんも、たぶん私たちの会話は聞いている。
むせている高橋さんに、注目が集まっていた。


私は彼の背中に手を置いて、固まったまま動けない。

…言った。
今、言っちゃった。

─────どうしよう。


とりあえず、椅子に座り直して、そのままラーメンを食べる。視線の置きどころに困りながら。

高橋さんも、やっとのことで咳が落ち着いて、ふと水を飲み干す。
そして、なにも言わないまま、ラーメンに向き直る。

いつも通りの顔。
でも、少しだけ動きが雑だった。

私は、もう味が分からなかった。




< 126 / 180 >

この作品をシェア

pagetop