この恋、予定外。
このとき、ふと気づく。
隣に高橋さんがいない。返事が後ろから聞こえた。

「─────あれ?」

最初は同じペースだったはずなのに。
振り返ると、少し後ろを彼が走っていた。
私は足を緩めて、また横に並ぶ。

「高橋さん、ペースこんなもんですか?」

「いや」

短く返ってくる。けれど、呼吸が少しだけ荒い。
すぐにほんの数十メートルで、違いが出る。

私は小さく笑った。

「アウトドア好きでも、走る体力とは別ですよ?」

「…は?」

「持久系と瞬発系、全然違いますから」

言いながら面白くなってしまって、ほんの少しだけペースを上げる。

「おい、ちょっと待て」

すぐ後ろから声が飛んでくる。
彼のこんな姿はレアだな、と内心にやにやしてしまった。

「ほら、置いていきますよ」

「こっちにも、ペース配分、ってもんが、あるんだよ」

「高橋さん、息切れしてるじゃないですか」

軽く返しながら、スピードを落とす。
隣に並ぶ気配。
でも、すぐにまた半歩遅れる。

噛み合わない。会話も、ペースも。
それなのに。
─────昨日みたいな空気は、もうどこにもなかった。


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