この恋、予定外。
当たり前みたいに返される。
そのまま彼がこちらに歩いてくると、白衣の裾がわずかに揺れた。

距離が近づくにつれて、さっきまで見ていた“別の人”が、少しずついつもの高橋さんに戻っていく。


「で?」と、短く言われる。

完全に、仕事の声だった。

「09、どうだった」

その一言で、私もスイッチが切り替わる。

「今日、朝ランのあとすぐに朝から使ってみました」

タブレットを開く。
さっきメモしておいた内容をもう入力しておいたので、それを確認しながら言葉を選ぶ。

「まず、テクスチャはかなり軽いです。07よりも伸びがいい」

「うん」

私のタブレットの画面を覗き込んでくる。
急に縮んだ距離に内心騒ぎたい気持ちもあったものの、仕事の仮面で覆い隠した。

「フィット感はかなりあります。乗せたあと、すぐになじむ感じで」

「じゃあ皮脂は?」

間髪入れずに返ってくる。

「お昼過ぎに少しテカりは出ましたけど、ヨレはなかったです」

「どのあたり」

「Tゾーンです。でも、汚く崩れる感じじゃなくて…」

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