この恋、予定外。
そこでふと気づく。彼がまだ、私のそばにいる。

…あれ?
いつもなら、ここで終わる。
「じゃあまた」で、それぞれの仕事に戻るはずなのに。

不思議に思って顔を上げると、高橋さんと目が合った。

「09、もう一段いじってる」

落ちてきた言葉に、思わず声を上げた。

「え、もうですか!?」

声が少しだけ大きくなる。
自分でも分かるくらい、食いついていた。

「ベースはそのまま。ちょっと触っただけだ」

さらっと言う。その言い方が、逆に引っかかる。
“ちょっと”って。

「それってもう試せる状態なんですか?」

「簡易だけどな」


簡易って言いながらも、ちゃんと“触れるもの”がもうあるってことで。驚きを隠せなかった。
私のバッグの中には、昨日渡された09がまだあるというのに。

その日のうちに使って、夕方に話して。
そこから、もう次。昨日の昨日で、あまりにも早すぎる。

でも、不思議と違和感はなかった。
むしろ、それが当たり前みたいに思えてしまう。
この人なら、やる。
そう思ってしまっている自分に、妙な安心感さえ覚えた。


< 145 / 180 >

この作品をシェア

pagetop