この恋、予定外。
••┈┈┈┈••
研究室の扉を開けた瞬間、空気が変わった。
昨日と同じ体験。
オフィスとは違う、少し乾いたような匂いに、アルコールと原料が混ざった淡い香りが重なって、足を踏み入れた瞬間にここが“仕事の場所”だと分かる。
視界の奥には、ガラスの器具と、小さなボトルが整然と並んでいて、同じ形の容器なのに、それぞれに貼られた番号が違うだけで中身がまったく別物なのだと、なんとなく想像できた。
高橋さんは何も言わずに、壁際にかけてあった白衣を取った。
袖を通す動きがやけに自然で、慣れているのが分かる。
ボタンは留めないまま、軽く肩を整える。
白衣に腕を通す動きを、なぜか目で追ってしまう。
それだけの動作なのに、さっきまでのスーツ姿とは、少しだけ印象が変わった。
「お、森川さん」
声がして顔を上げると、白衣姿の朝倉課長がデスクの上の書類を確認していた。
「あぁ、試作?」
「はい。09の派生です」
横で高橋さんが短く答える。
その声はさっきまでと同じはずなのに、この場所に入った途端、無駄が削ぎ落とされたみたいに低く響いて、ほんの少しだけ距離を感じた。
「あれか」
課長は一度だけこちらを見て、軽くうなずく。
そしてそれ以上は何も言わず、すぐに手元へ視線を戻すあたりが、いかにも“開発側の人間”だと思う。
「じゃあ、あとはよろしく」
それだけ言って、白衣のまま部屋を出ていった。
研究室の扉を開けた瞬間、空気が変わった。
昨日と同じ体験。
オフィスとは違う、少し乾いたような匂いに、アルコールと原料が混ざった淡い香りが重なって、足を踏み入れた瞬間にここが“仕事の場所”だと分かる。
視界の奥には、ガラスの器具と、小さなボトルが整然と並んでいて、同じ形の容器なのに、それぞれに貼られた番号が違うだけで中身がまったく別物なのだと、なんとなく想像できた。
高橋さんは何も言わずに、壁際にかけてあった白衣を取った。
袖を通す動きがやけに自然で、慣れているのが分かる。
ボタンは留めないまま、軽く肩を整える。
白衣に腕を通す動きを、なぜか目で追ってしまう。
それだけの動作なのに、さっきまでのスーツ姿とは、少しだけ印象が変わった。
「お、森川さん」
声がして顔を上げると、白衣姿の朝倉課長がデスクの上の書類を確認していた。
「あぁ、試作?」
「はい。09の派生です」
横で高橋さんが短く答える。
その声はさっきまでと同じはずなのに、この場所に入った途端、無駄が削ぎ落とされたみたいに低く響いて、ほんの少しだけ距離を感じた。
「あれか」
課長は一度だけこちらを見て、軽くうなずく。
そしてそれ以上は何も言わず、すぐに手元へ視線を戻すあたりが、いかにも“開発側の人間”だと思う。
「じゃあ、あとはよろしく」
それだけ言って、白衣のまま部屋を出ていった。