この恋、予定外。
痛いほどの沈黙が落ちる。
さっきまで動いていた空気が、ぴたりと止まるのが分かる。まるで、時計の秒針がカチリと止まるみたいに。


高橋さんの手が、わずかに止まった。
そのあと、ほんの小さな音がした。

─────カン!と何かが、ぶつかったような音。


彼の手元に視線を向けると、作業台の端で小さなガラス容器が傾いていた。

完全に割れたわけじゃない。
でも、明らかに手元がずれていた。


「……覚えてる」

遅れて聞こえてきた声は、さっきまでよりも少しだけ低かった。
視線は、こちらを見ていない。


その一言だけでも物足りなくて、それで終われなかった。
胸の奥に残っていたものが、少しずつ形を持ってしまう。これが、きっと本当の私なんだ。

「それなら」

言いかけて、少しだけ言葉が揺れる。
やめた方がいい、という考えが一瞬だけよぎる。
でも、それよりも先に、口が動いた。

「…ちゃんと見てよ」

ぽろり、と落ちた言葉は、思っていたよりもずっと弱かった。
弱かったはずが、この場の空気を変えるには十分すぎた。


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