この恋、予定外。
彼は資料に軽く指を置いたまま、続ける。

「処方としても、そこを優先して組んでます。密着はあるけど、乗せた瞬間の重さは出したくなかったので」

言葉は淡々としている。でも、その内容はさっき私が話したことを、ちゃんと拾ってくれている。

「営業側の評価でも、朝のストレスが少ないって出ているのなら、そこは軸にしていいと思います」


胸の奥が、少しだけ揺れる。
あの人は、ちゃんと見てる。
そう思ったばかりなのに、またそれを仕事の中で見せられるなんて、反則だ。


マーケ部の社員が、メモを取りながらうなずいた。

「じゃあ、“軽い”を単体で出すより、“朝、迷わない”とか“整えて出られる”みたいな生活導線に寄せた方がよさそうですね」

「あー!それ、いいですね!」

デザイン部も乗る。

「パッケージも、“高機能感”より“清潔感”寄りの方が合うかもしれません。あまり盛りすぎない方が、この商品の良さが出そうです」


「ただ、シンプルすぎると売り場で埋もれますよね?」

ここで瑞希さんが初めて口を開いた。みんなの視線が自然と集まる。
彼女は凛とした声で続けた。

「営業目線で言うと、第一印象で“なんとなく良さそう”って思わせるフックは必要です。説明しないと伝わらない商品は、やっぱり初速が鈍いので」

その言い方が、いかにも瑞希さんらしい。


< 162 / 180 >

この作品をシェア

pagetop