この恋、予定外。
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その日の夕方。
帰社した社員たちで営業部のフロアはざわついていた。
私は昼前にもいた化粧室の鏡の前に立っている。
もう一度、顔を確認する。
頬、口元、小鼻、毛穴。
…崩れてない。
昼にあれだけ動かしたのに、思っていたよりずっときれいだった。
後ろでカツカツと足音が聞こえ、賑やかな声がした。
「どう?」
振り向くと、モニターに参加していた営業事務の先輩が鏡を覗き込んでいた。
頬を指で押さえ、より鏡に近づく。
「いつもより全然マシなんです。皆さんはどうですか?」
「ほんと?」
鏡の前にきれいにずらっと女性社員たちが並ぶ。
「あ、すごい!崩れてないかもー。ほらここ」
先輩が鼻の横を指す。
「いつもこの辺ドロドロになるじゃん」
「あー、たしかに」
「今日はなってない!」
そのまま何人かが口々にしゃべる。
「待って、見せてー」
「え、ほんとだ」
「崩れてない」
「これ普通に欲しいんだけど!」
私は鏡の前で黙った。
…やっぱり。
─────これは絶対、売れる。