この恋、予定外。

••┈┈┈┈••

その日の夕方。
帰社した社員たちで営業部のフロアはざわついていた。

私は昼前にもいた化粧室の鏡の前に立っている。

もう一度、顔を確認する。

頬、口元、小鼻、毛穴。

…崩れてない。
昼にあれだけ動かしたのに、思っていたよりずっときれいだった。

後ろでカツカツと足音が聞こえ、賑やかな声がした。

「どう?」

振り向くと、モニターに参加していた営業事務の先輩が鏡を覗き込んでいた。

頬を指で押さえ、より鏡に近づく。

「いつもより全然マシなんです。皆さんはどうですか?」

「ほんと?」

鏡の前にきれいにずらっと女性社員たちが並ぶ。

「あ、すごい!崩れてないかもー。ほらここ」

先輩が鼻の横を指す。

「いつもこの辺ドロドロになるじゃん」

「あー、たしかに」

「今日はなってない!」

そのまま何人かが口々にしゃべる。

「待って、見せてー」

「え、ほんとだ」

「崩れてない」

「これ普通に欲しいんだけど!」


私は鏡の前で黙った。
…やっぱり。

─────これは絶対、売れる。


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