この恋、予定外。
横で、高橋さんは何も言わずにテスターを手に取っていた。
キャップを外して、パフを指で押す。
そして売り場全体を見渡している。


その瞬間、近くにいた女子高生二人がちらっとこちらを見た。
…いや、正確には“こちら”ではない。
高橋さんを見ている。

化粧品売り場のど真ん中で、無表情でパフを触っている男。
どう考えても浮く。


「ねえ、あの人…」
と小声が聞こえる。

「彼女の付き添い?」

「いや店員じゃない?」

私は思わず顔を背けた。

目立ってる。でかい図体してこんなキラキラコスメの売り場に突っ立っていたら、当たり前だ。

─────すみません、この人うちの開発です。
心の中で女子高生たちに説明してみた。
聞こえるはずもないが。


店員さんも周りの目が気になったのか、少しだけ苦笑している。

「今日は森川さんお一人じゃないんですね。珍しい」

「あ、開発部の人です」

「開発!?」

店員さんの目が少し丸くなる。

高橋さんは無表情のまま軽く会釈した。

「どうも」
それだけ言って、また棚を見る。

まったく気にしていないらしい。


< 30 / 180 >

この作品をシェア

pagetop