この恋、予定外。
「ふふ、営業さんって感じでは、たしかにないね」

店員さんはなにかを言いたげに笑っていた。たぶん、ちょっと面白がっている。

彼女がそう言いたくなるのも、分かる。

着崩したスーツ、緩んだネクタイ、だるそうな空気。
営業職というには、ありえない雰囲気だからだ。


私は彼には構わず、慣れた調子で説明を続けた。

「今うちで作ってるファンデも、崩れにくい系なんですよ」

「へぇー!」

やはり、店員さんが女性だと食いつきがいい。興味深そうに棚をちらりと見る。

「価格帯はどのくらいなんですか?」

「三千円前後を予定してます」

「なるほど!それならこの辺ですね」

店員さんが指さしたのは、棚の中央あたりだった。
その時だった。

後ろから、ぼそっと声が落ちる。

「森川」

振り向くと、高橋さんが照明を見上げていた。

「はい?」

「ここの照明、強いな」

振り向くと、高橋さんが売り場の天井を見上げていた。

「強い?」

「色が沈む」

「え?」

私は思わず聞き返す。
高橋さんはテスターを軽く指で押しながら、淡々と言った。

「この光だと、マット系は全部くすんで見える」

「……いや」

私は慌ててすぐに首を振る。

「それだけじゃないです。今、ツヤが売れてるのはトレンドですよ」

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