この恋、予定外。
急に口を挟んできた高橋さんに店員さんが戸惑うのが分かる。

高橋さんは一瞬だけこちらを見たものの、まったく気にしない。
むしろ、私との会話を普通に続ける。

「トレンドだけで棚は変わらない」

「変わりますよ」

彼のこのロボットみたいな男の心を、どうにかしてやりたいと思ってしまった。
言い負かしてやりたかった。

「お客さんが求めてるものが変われば、売り場はちゃんと動きます!」

「違う」

彼は見事なまでの即答だった。

「“見えるもの”が変わるから売れる」

言い返そうとして、一瞬、言葉が止まる。


高橋さんは視線を棚に戻したまま続けた。

「この照明で綺麗に見えるのがツヤ系。だから手に取る。結果、売れる」

私はつられて棚を見た。
ツヤ、ツヤ、ツヤ。
たしかに、光を拾って全部綺麗に見える。

「…それでも」

私はメモを握ったまま、唇を噛んだ。

「最後に買うかどうか決めるのは、お客さんの気分です」

この言葉を受けて、高橋さんが小さくため息をついた。分かりやすいほどの呆れ顔で。

「じゃあ作るのは無理だな」

「は?」

「気分は設計できない」

「できます!」

今度は私が即答していた。
そう来ると思っていなかったのか、彼は訝しげに視線を向けてきた。

「使い心地とか、仕上がりとか、“また使いたい”って思わせるのは、作れますよ!」


< 32 / 180 >

この作品をシェア

pagetop