この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

店を出ると、昼前の空気がふわっと肌に当たった。
ドラッグストア特有の甘い匂いが、外の風に溶けていく。

私はメモ帳をぱたんと閉じる。

「いやー、やっぱ売り場見ると勉強になりますね」

横を歩く高橋さんは、相変わらずポケットに手を入れたままだった。

「森川って、外だと別人だな」

ぼそりと言われた感想がそれで、私はまたケンカを売られたのかとすぐに顔を上げた。

「営業ですもん!当たり前ですよ!」

高橋さんは少しだけ眉を動かす。

「そういうもんか。店員としゃべるのも、客としゃべるのも、自然だった」

「そうですか?」

そう思われたことが、少しだけ意外だった。

「相手の心を開くのがうまい」

「営業ですから。…高橋さん」


私が足を止めたので、先を行こうとする彼が不思議そうに振り返る。

「褒めてくれたの、初めてですね!」

ちょっと嬉しくてにこにこしてしまったが、隠す必要もない。

素直にそう言ったのに、彼は不服そうに首をかしげた。
ドラッグストアの看板をちらっと振り返りながら言った。

「観察結果を述べたまでだ」

「えー!またそれですか」

私はため息をついた。せっかく褒められたと思ったのに。
違っていたことが残念すぎる。

「人のことサンプル扱いしないでください」

「森川は、俺のサンプル」

「それ前にも聞いた!」


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