この恋、予定外。
こんな調子で大きな声で嘆いていた、そのとき。

……ぐぅ。

思いっきり、お腹が鳴った。
私はぴたりと止まる。


高橋さんが顔色を変えることなく、こちらを見る。

「腹、減ったのか?」

「…減ってません」

「鳴ったじゃん」

「気のせいです」


すたすたと少し歩いてから、私は観念して言った。

「…お昼行きません?」

「森川ー。まだ一件目だぞ」

「営業の外回りって、意外と体力仕事なんです」

お腹の音も聞かれたし、開き直るしかない。
私は前を指さす。

「あっ、ほら。ちょうど牛丼屋ありますよ!」

高橋さんが私の指した方に視線を向ける。
駅前の通りの角に、赤い看板が見えた。

看板を見ただけなのに、またお腹がぐぅ、と鳴った。

「行きましょうよぉ」

高橋さんはスマホで時間を確認し、少しだけ考えるようにしてから横目で見てきた。

「午後、三鷹だぞ」

「知ってます」

「食ったからって眠くなるなよ」

変な忠告に、笑ってしまった。

「あはは!なりませんよ!なるわけない!」

営業をなめてもらっちゃあ、困る。
私は朝と同じように、ぐいっと両手で彼の腕をつかんだ。

「じゃ、牛丼行きましょう!」

高橋さんは小さく息を吐いた。

「だから、引っ張んな」

「外回りはスピードですよ!」

私はそう言って高橋さんと共に牛丼屋に入った。



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