この恋、予定外。
牛丼がすぐに運ばれてきた。

私は慣れた手つきで紅しょうがを取った。
山盛り。遠慮なく。

隣で高橋さんが箸を割りながらつぶやく。

「多くないか?」

「おいしいじゃないですか」

「味、変わるだろ」

「変わらないですよ!」

そのまま牛丼に紅しょうがをのせて箸を割り、そして「いっただきまーす!」とすぐに食べ始めた。

高橋さんがまたこちらを見るのが分かる。

「森川」

「はい?」

「食うの、早いな」

「普通です」

「ひと口がでかい」

私は牛丼を頬張りながら言う。

「お腹空いてたんです。てか、いちいち観察するのやめてくれません?」

高橋さんは少しだけ眉を動かした。
たぶん、私に指摘されるまで無意識だったのかもしれない。

そこに反論することはなく、彼も牛丼をひと口食べて、ぼそっと言った。

「体力仕事だから?」

「そうです。並なんて頼んだことないです」

「…面白いな」

私は頬張ったまま、顔を上げた。
たぶん、目は見開いてると思う。

「え?」

でも、高橋さんはそれ以上何も言わない。
ただ牛丼を食べている。

もう目は合わない。
まあいいか、と私もまた牛丼を口へ運ぶ。

「美味しいですね」

「うん」

それだけの会話なのに、さっきまでより、少しだけ居心地がよくなっていた。



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