この恋、予定外。
「森川」

耳に響く低い声。
私はゆっくり目を開けた。


「……ん?」

ぼんやりした視界の中で、高橋さんがものすごく迷惑そうにこちらを見ている。

「着いたぞ」

「え…もう…?」

“三鷹駅”。

駅名が目に入った瞬間、私は体を起こそうとして気づいた。


視界の端に見える彼のスーツの肩。
私の頭が、思いっきり肩に乗ってる。

だからだったのか、いつもより近い距離で声が響いたのは。

「うわぁ!」

一瞬で意識が覚醒した。
私は飛び起きた。

「すみません!!」

高橋さんは特に動いた様子もなく、ただ静かに立ち上がった。

「降りるぞ」

それだけ言うので、私は慌てて後を追う。

ホームに降りた瞬間、高橋さんがこちらを見る。
そして一言。

「森川、口」

「え?口?」

私は反射的に口元を触る。
指先に、ぬるっとした感触。
…ヨダレ。

私は固まった。

高橋さんがただ一言。

「マジで最悪」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

私は慌ててハンカチを取り出した。

「いや違うんですこれは!」

「なにが」

「牛丼が!」

「意味分からん」

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