この恋、予定外。
私は必死に口元をゴシゴシと拭く。

顔が熱い。最悪すぎる。
人生の汚点だ。


ちらっと高橋さんを見ると─────、
少しだけ口元が緩んでいた。

また笑ってる。


「え、笑ってますよね?」

思わず確認してしまった。
彼は一瞬で仮面をかぶるかのごとく表情を無に戻した。

「笑ってない」

「笑ってましたよ」

「寝ぼけてんのか?」

「絶対笑いました!」

高橋さんは小さくため息をついた。

「さっきまで怖いだのなんだの言ってたのに」

彼は駅の出口の方を見ながら言った。

「こういう時だけ、無防備だな」


先を歩いていく彼についていくのに必死で、その時は意味なんて考えている余裕はなかった。

代わりにハンカチで落ちてしまったリップを軽く塗り直して急いだ。



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