この恋、予定外。
店長の代わりに私が聞いてしまった。
高橋さんはこちらを見もせず、棚の一箇所をトントンと指で軽く叩く。

「この色だけ、減り方が違う」

店長も一緒になって覗き込む。

「あ、ほんとだ」

「明るい色ばっかり減ってる!」

こんなの、言われなければ気づかないレベルだ。あの観察眼でこれに気づいたというのか。

当の本人はなんてことない温度でうなずく。

「色、足りないだろ?」

私は小さく息を吐いた。これはため息ではなく、感嘆の息だ。

─────やっぱりこの人、すごい。


店長が目を丸くしたまま笑う。

「森川さん、いいひと連れてきたねぇ」

「いや、勝手についてきただけです」

決して“いいひと”などではないので、否定したけれど。

店長の笑顔を見るに、たぶん聞いていない。
高橋さんも聞こえているのかいないのか、棚を見続けている。

「森川。このへんのテスター、少なくなってるぞ」

すぐに話を変えてくる彼についていけず、今度はなに!?と私はいい加減にイラついてきた。

「もー!どこですか!」

「なにキレてんだよ」

「どこ!?」

この人と一緒にいると、私の気が休まらない。
でもたしかに、いくつか空になっている。

「すみません、店長!このブランド、テスター切れてるんで補充お願いしていいですか?」

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