この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

外回り業務を終えて営業フロアに戻ると、ちょうど席を立った瑞希さんと目が合った。

「あ、茉央」

瑞希さんが「お疲れ様」とこちらへ歩いてくる。

そして私の隣に立っている高橋さんをちらりと見ると、少しだけ眉を上げた。

「外回り?」

「はい、さっき戻りました」

瑞希さんはくすっと笑う。

「仲良くやってる?」

「やってません」

私があまりにも即答したものだから、横で高橋さんが小さく呆れたようなため息をつく。
ふふっと瑞希さんが肩を揺らして笑った。

「高橋くん」

「…なに」

「私の可愛い後輩、あんまりいじめないでね」

高橋さんは一瞬だけ目を細めて瑞希さんを見る。

「いじめてない」

私は思わず言った。

「この人、嘘ついてます!」

“この人が犯人です!”みたいな言い方をしてしまった。だが事実。

「ほらね?茉央をちゃんと大事にしてくれなかったら、私、あなたのこと許さないから」

静かで優しい言葉の中に、きらりと光る瑞希さんの美しい棘。
こういうところが頼もしくて、好きで慕ってしまう。

高橋さんはだるそうにぼそっと言う。

「観察するには、まあ退屈しないよ」

なに言ってんの?と、私は顔をしかめた。

「それが嫌なんですけど!」

「茉央。高橋くんのそれ、褒め言葉だから」

「全然違う」
「違います!」

ここで初めて私と高橋さんの意見が合致した。
なんでこのタイミングで、と嫌々ながらも視線が合ってしまった。

「楽しくやってるじゃん。ま、ほどほどにね」

瑞希さんはそう言って、たぶんどこか他部署へ用事があるのだろう。
タブレットを片手に私たちに手を振ると事務所を出ていった。



< 55 / 180 >

この作品をシェア

pagetop