この恋、予定外。
私はノートパソコンを抱えてそちらへ移動した。
彼は自分のデスクの横に、隣の席から椅子を引いて持ってきた。

隣の席はやけに整っていて、生活感がなかった。
誰かが使っていた気配だけが、きれいに残っている。
私のデスクとは大違い。

逆に高橋さんのデスクは大雑把に物が置かれていて、そこだけは私と似ているなと思った。


彼の机の上には、小さなポンプボトルが並んでいた。

白いラベル。
マジックで書かれた文字。
試作08。

「08!できたんですか?」

「うん。ベースだけ」

高橋さんはボトルを軽く振る。

「07、ちょっと重いんだよな」

「そうなんですか?」

「夕方、皮脂を拾いすぎる」

なるほど、と思わずうなずいた。
07のテスト結果は悪くなかった。でも、改善の余地もあった。
07でも売れるけど、もっといける。


「今日ドラストでも言われました。他社のですけど、リキッドは午後になると重いって」

高橋さんはちらっと私を見る。

「売り場メモ、あるだろ」

「あっ、はい!」

私はノートパソコンを開いて、画面を向けた。

今日の外回りデータは、だいたい打ち込み終わっていた。
高橋さんは黙ってそれを読んでいる。

棚の写真、価格帯、テスター。


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