この恋、予定外。
少ししてから、ぼそっと言った。

「ここの、約二千五百円のゾーン」

指が画面を指す。

「はい」

「ここに置く」

「もう売り場決めてるんですか?」

「売れる場所、だろ」

高橋さんはそれだけ言って、椅子にもたれた。

それ以上は、なにも言ってこない。
彼はいつもそうだ。要点だけ伝えて、あとは私に任せるスタイル。


キーボードの音だけが静かに響く。
高橋さんも姿勢を崩したまま、自分のパソコンと向き合ってカタカタとキーボードを鳴らしていた。

しばらく、二人とも黙って仕事をしていた。
外の窓はすっかり暗い。


私たちにしては珍しく会話がない状態が続いた頃、ふと高橋さんが突然話しかけてきた。

「森川ってさ」

「はい?」

パソコンの画面を見ながら生返事をすると、彼は思いもよらないことを私に尋ねた。

「なんでそんなに頑張んの」

私はキーボードを打つ手を止めた。少しの間。

「…営業ですから」

テンプレみたいな答えになってしまったけど、間違ってはいない。私の真ん中にある芯の部分。
それなのに、彼だけは納得していない表情を浮かべていた。

「違う。森川、売りたい顔してる」

私はここでようやく笑ってしまった。

「なんですか、それ」

「見てれば分かる」

「…観察結果、ってやつですか?」

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