この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

自動ドアが開くと、いつもの空気が流れ込んできた。

軽いBGM。薬品の匂い。整然と並んだ棚。
見慣れているはずの景色。

先日も来たドラッグストアだ。


「こんにちはー!」

いつも通り声をかけると、店員が軽く会釈を返してくれる。
店長は見当たらない。


とりあえず私はそのまま売り場へ向かった。
ファンデーション棚の前で立ち止まる。

価格帯。テスターの残量。什器の幅。
いつもなら自然と目に入ってくる情報を、ひとつずつ拾っていく。

迷うところなどどこにもないはずなのに、ふと手が止まる。


「……」

私は小さく眉を寄せた。
視線が、定まらない。

棚を見ているのに、頭の中で別の映像がちらつく。


あの、低い声。
短く言い切る言葉。

隣で同じ棚を見ていた、あの距離。

今は、隣には誰もいない。
それにちょっと安心する一方、ほんの少し、少し前まであったはずの何かが足りない。

理由は分からないのに、そこだけ空白になっている感じ。


思わず、視線を逸らした。
だから違うってば。今は仕事。


私は軽く首を振って、メモ帳を取り出す。

「えっと…この棚は、先月より…」

ひとり言を言いかけて、それも止まる。

何が変わったんだっけ。
分かるはずなのに、言葉にならない。

この前と同じ棚のはずなのに、少しだけ遠く感じた。


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