この恋、予定外。
一度、深く息を吸う。
落ち着け、と言い聞かせた。

売り場をもう一度見直してみる。


テスター。減り方。価格帯。

「二千五百円ゾーンか…」

ぽつりとつぶやく。
この間、隣で同じ場所を見ていた視線がよぎる。
じっとこの棚を見てたっけな。

そっと棚に手を置く。
そしてふと、そんな自分にはっとする。

「……なんなの、もう」

小さくこぼし、そのまま腕を組んだ。
いつもなら、もっと早く判断できるのに。

今日は、全部ワンテンポ遅い。そこだけ自覚はあった。



「あ、森川さん?」

気を抜いていたところに後ろから声をかけられて、急いで振り返る。

「あ、お世話になってます!」

私が来たことをスタッフから聞いたのだろう、いつもの丸顔の店長が来てくれていた。

でも、ちょっとだけ少し不思議そうな顔をしていた。


「どうしたの?今日はなんか元気ないね」

「いやいや!そんなことないですよ。いつもの元気モードです!」

慌てて営業スイッチをオンにすると、店長はキョロキョロと店内を見回した。

「あれ?今日は、いないの?」

「はい?」

「あのでっかい男の人」

一瞬、何を言われたのか分からなかった。

「……え?」

「ほら、この前一緒に来てたでしょ。開発の人」


─────高橋さんのことだ。
名前が浮かんだ瞬間、胸の奥が小さく跳ねる。


「今日は別です」

少しだけ早口になった気がした。
店長は「ふーん」と軽くうなずく。

「なんか、あの人といるときの方が、やりやすそうだったけどなあ」

「そんなわけ、ないですよ…」

反射的に否定する。
でも、その言葉は思ったよりも弱かった。


誰もいない、私の隣。



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