この恋、予定外。
「こんにちは。朝比奈化粧品の森川です」

名刺入れを開きながら挨拶する。

カウンターの奥にいた女性が顔を上げた。
若い。たぶん二十代後半。

髪もメイクも整っていて、お店の雰囲気にぴったり合っている。


「……あ、はい」

一瞬だけ間があった。警戒の返答だと察する。

そっと名札をちらっと見た。
店長のようだ。

彼女はカウンターから出てきてくれたものの、あまり目を合わせようとはしなかった。

「今ちょっと立て込んでいて。新規の営業ですか?」


…なるほど、今じゃないな。
名刺を出しかけた手を、私は一度引いた。

「朝比奈の営業をやっております、森川です」

「どうも。初めまして」

声は丁寧。でも温度は低い。

“時間を割く価値があるか見ている”視線。それが私を上から下まで確認されているのが分かる。
こういうのは、正直慣れている。

臆することなくにこっと笑顔を向けた。

「もしよろしければ、今日は売り場の状況も含めてお話できればと思って」


私は一度だけ視線を外して、棚を見る。

ぎゅうぎゅうに並んだ商品。
色の洪水。

その中で、明らかに“触られている場所”と“触られていない場所”がある。


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