この恋、予定外。
すぐには踏み込まない方がよさそうだ。
焦らず、店内をゆっくり見渡す。

ガラス張りから差し込む自然光。
棚の高さ。
商品の並び。
色のトーン。
派手さはない。

でも、すべてにこだわりが詰まっていて、すべて統一されている。そんな印象を受けた。


「…すごく、まとまっていて…きれいですね」

ついぽつりとこぼすと、女性の視線が少しだけ変わる。
さっきまで石田先輩を測っていたはずなのに、私にそれが向けられている。

「きれい…ですか?」

「はい。たぶん、“何を置かないか”も決めてますよね」

一瞬、沈黙。
こういう静けさも、新人の頃は怖かった。だけど今の私にはそれはない。
こういう間合いの駆け引きも、営業では絶対に必要だ。

「……まあ、そうですね」

ほんの少しだけ、店長の口元が緩んだ。

その瞬間、空気が変わったのを悟る。
同時に感じ取ったらしい先輩が、隣で静かに尋ねてきた。

「森川、このへんどう見る?」


…あ、バトンが渡されたな。
すぐに分かったので、私は一歩前に出た。

「この棚、すごく好きです」

商品を指さす。

「質感が全部揃ってるのに、重くなってないです」

今度は視線を少しずらして「ただ」と、少しだけ間を置いた。

「ここだけ、ちょっと浮いてませんか」

私に指摘されるなんて思いもよらなかったのだろう。女性の視線が一気に鋭くなる。

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