この恋、予定外。
怖さはない。どこが浮いているのか気になっている感じだった。

「どこですか?」

店長もこちらへ一歩近づいてきたので、私は彼女に見えやすいように一点を指した。

「このゾーンだけ、“手に取りやすさ”の理由が弱いです」

彼女がさらに近づき、私の指した棚を見つめる。

「……どういう意味ですか?」

「このお店って、“なんとなく”で買う人、あまりいないと思うんです」

お店の空気に寄せて、合わせる。
こだわりの空間を、ゆっくり埋めるように言葉を置きにいく。

「ちゃんと見て、選んで、納得して買う。そんなお店だと思います」

ここはあえて、店長の顔を見ない。
指し示す棚に顔を向け、続けた。

「だから、ここも“理由”が必要だと思います」

女性は腕を組む。
でも、その目はもう逸れていない。

「例えば?」

短い一言。
私はタブレットを開き、操作しながら彼女へ身を寄せた。

「今のラインナップだと、ベースメイクは“軽さ重視”が多いですよね」

画面をスクロールする。やがて、一枚の資料で指を止めた。

「なので、同じ方向性のものを足すよりも、“軽いのに整う”タイプの方が、この棚には合うと思います」

女性の視線が画面に落ちる。
まだなにも言わない。話を続けてもいいサインだ。
商品を拡大して、成分表や機能面をうつす。

「これは、素肌感は残しつつ、毛穴補正が少しだけ強い処方です」

指先で分かりやすいようにポイントを示した。

「このお店のお客さんって、“隠したい”より“整えたい”人が多い印象を受けました」


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