この恋、予定外。
••┈┈┈┈••

定時を超えて、少しずつフロアが静かになってきた時間。
私もようやくひと段落して、パソコンの電源を落として閉じる。


はぁ、とため息をつくと、ひょこっと瑞希さんが顔を出した。

「茉央、もう終わる?」

「はい!いまやっと終わりました」


どうやら瑞希さんもちょうど終わったらしい。肩にバッグをかけていた。
さらっとした髪は今日はひとつに結ばれている。

「じゃ、駅まで一緒に行こ」

「はい!なんなら飲みに行きます?」

「ふふ、それもいいね」


二人で廊下を歩きながら、エレベーターホールに向かう。
まだ帰りきっていない社員の笑い声や話し声が、どこかから聞こえてくる。


「茉央、最近ずっと元気ないね」

ふとそんなことを言われ、私はすぐに「え?」と聞き返した。

「そうですか?全然、元気なんですけどね」

「飲みに行ってもいいけど、相談とかあるの?」

ちようどエレベーターが到着し、乗り込む。
私は『1』のボタンを押してから首を振った。

「いやー、特に悩みとかはないですけど。パーッと飲みたいなーって」

扉が閉まり、下降する。
静かな振動の中で、ふと思う。


「私、そんなに元気なく見えました?」

ぽつりとこぼすと、瑞希さんが少しだけ笑った。

「うーん、正確に言えば、元気はあるけど」

一拍置いて、

「なんか、うまくいってない顔してる」と、続けた。

腑に落ちなくて、首をかしげてしまった。

「え、逆じゃないですか?むしろ最近、ちゃんとうまくいってますよ」


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