この恋、予定外。
「……すみません」

「分かってるって」

言葉を重ねて、広げないようにする。

「私、もう無理です…」

思いもよらない佐野のその声に、はっと息を飲んだ。
佐野は涙で濡れた目で、私をまっすぐ見ていた。


「森川さんみたいに頑張れません」


そんなことを、言われると思っていなかった。
小さな衝撃なのに、ガツンと殴られたみたいな痛さがあった。


少しだけ間を置いてから、声を落とす。

「…分かった。佐野、今日はもういいから」

これ以上、彼女を追い込んではいけない気がして、今度は優しく言えた。

「私に任せて。一人でもやれる!」

あえて、明るく言い切る。
少しの不安も見せてはいけない。自分のせいだ、と思わせてはいけない。


迷いが残る顔を、佐野が浮かべる。でも、ここで引かせないといけない。
甘やかしではなく、これを今後に活かすための教訓にしてもらう。今の彼女にベストな回収だと判断した。

「可愛い顔、台無しになっちゃうよ!明日に温存しといて!ね?」

強制ではないけれど、断れない言い方。
佐野は唇を噛んで、それから何度も頭を下げた。

「…ありがとうございます」

「うん」

「本当に……」

「うん、いいから」

ポンポン、と軽く背中を叩くと、静かに彼女がうなずいた。


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