この恋、予定外。
足音が遠ざかって、扉が開いて、閉まる。

その音で、空気が完全に切り替わった。



─────静かだ。

さっきまで誰かがいた気配だけが残っていて、でももう何も動いていない。


私はその場にほんの一瞬だけ立ち尽くして、それからゆっくりと自分のデスクに戻って椅子を引いて座る。

そしてすぐに画面を開く。手を置く。動かす。


やることは、まだ終わっていない。
─────やれる。

そう思い込むみたいに、視線を落とした。



絶対間に合う。間に合わせてみせる。
明日出勤してきた佐野に、「大丈夫だったよ!」なんて笑顔で言えたら。
彼女はまた前を向けるはずだ。

間に合わせる。

キーボードを叩く指が少し止まって、また気を取り直して動かす。

間に合わせなきゃ。
必ず。必ず。

…でも、もしも。間に合わなかったら?



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