君の手が動く限り、俺は隣にいたいから
またしても一文字一句違わぬ図星を指され、凌は言葉を失った。
今度は恐怖や驚きではなく、自分の無鉄砲な行動をすべて白日の下に晒されたような、猛烈な気恥ずかしさが一気に込み上げてくる。
みるみるうちに顔が赤くなっていくのを感じながら、凌はただただ目を丸くして、所在なげに視線を泳がせることしかできなかった。
「……あの子は頑固だからね。そう簡単には教えてくれないだろうね」
凌の分かりやすすぎる反応を見て、紫は可笑しそうに、けれど何処か遠い目をして呟いた。
「現にね、あの子はもう、この部室にすら顔を出さないんだから」
その言葉に、凌の胸の奥が小さく跳ねた。
美術部の前に飾られている、あの圧倒的な青空。それなのに、描いた本人は部室にすら来ないという歪な現実。
屋上で自分の描いたものを「どうせ全部失敗作だから」と冷たく吐き捨てていた彼女の姿が、再び鮮明に脳裏をよぎる。
気づけば、凌の口は動いていた。
「あの、綾瀬先輩」
「何?」
椅子の背もたれに顎を乗せたまま、紫が上目遣いで応じる。
「その……“あの子”って、一体誰なんすか?」
凌は一度、胸元に抱え込んだままの『青空の絵』へと視線を落とした。ガラスの向こうで息づく鮮烈な色彩。
それから覚悟を決めたように顔を上げ、紫の瞳へと真っ直ぐに視線を戻した。
「この絵を描いた人は、誰なんすか? 何があって、屋上で一人で絵を描いてるんすか……?」
それは、凌の嘘偽りのない、心からの問いかけだった。
ただの野次馬根性ではない。昼休みにあの青い世界に心を奪われ、本人から明確な拒絶を受け、それでもなお彼女のことが頭から離れない。その衝動の正体を知りたかった。
凌の真剣な眼差しを、紫は真っ正面から一心に受け止める。
しばらくの間、二人の間で視線が静かに交錯した。
やがて、それまで紫の顔に張り付いていた、全てを見透かしたような余裕の微笑みが、砂が崩れるようにゆっくりと消えていく。
今度は恐怖や驚きではなく、自分の無鉄砲な行動をすべて白日の下に晒されたような、猛烈な気恥ずかしさが一気に込み上げてくる。
みるみるうちに顔が赤くなっていくのを感じながら、凌はただただ目を丸くして、所在なげに視線を泳がせることしかできなかった。
「……あの子は頑固だからね。そう簡単には教えてくれないだろうね」
凌の分かりやすすぎる反応を見て、紫は可笑しそうに、けれど何処か遠い目をして呟いた。
「現にね、あの子はもう、この部室にすら顔を出さないんだから」
その言葉に、凌の胸の奥が小さく跳ねた。
美術部の前に飾られている、あの圧倒的な青空。それなのに、描いた本人は部室にすら来ないという歪な現実。
屋上で自分の描いたものを「どうせ全部失敗作だから」と冷たく吐き捨てていた彼女の姿が、再び鮮明に脳裏をよぎる。
気づけば、凌の口は動いていた。
「あの、綾瀬先輩」
「何?」
椅子の背もたれに顎を乗せたまま、紫が上目遣いで応じる。
「その……“あの子”って、一体誰なんすか?」
凌は一度、胸元に抱え込んだままの『青空の絵』へと視線を落とした。ガラスの向こうで息づく鮮烈な色彩。
それから覚悟を決めたように顔を上げ、紫の瞳へと真っ直ぐに視線を戻した。
「この絵を描いた人は、誰なんすか? 何があって、屋上で一人で絵を描いてるんすか……?」
それは、凌の嘘偽りのない、心からの問いかけだった。
ただの野次馬根性ではない。昼休みにあの青い世界に心を奪われ、本人から明確な拒絶を受け、それでもなお彼女のことが頭から離れない。その衝動の正体を知りたかった。
凌の真剣な眼差しを、紫は真っ正面から一心に受け止める。
しばらくの間、二人の間で視線が静かに交錯した。
やがて、それまで紫の顔に張り付いていた、全てを見透かしたような余裕の微笑みが、砂が崩れるようにゆっくりと消えていく。