赫い滴と湿った吐息
第二章:暴かれる素顔、虚構の大学生
第一話:微睡みの残滓と冷めた肌 1
「……ん、ぅ……」
少女の薄い唇から漏れる吐息は、先刻の熱を失い、湿ったシーツの冷気に混じる。
鼻腔を支配するのは、乱れた寝具から立ち上る乾いた汗と、微かな煙草の残り香。
視界に映る彼女の横顔は、微かな街灯の光を拾い、あどけない幼さを浮き彫りにした。
「起きたか」
男の低い声が、静寂の壁に跳ね返り、彼女の耳朶を硬い振動となって揺らす。
耳朶を打つのは、男がライターを点した際の、チッという短い金属の摩擦音。
舌先に残る安物のコーヒーの苦みが、重い眠りの名残を、ゆっくりと削ぎ落とした。
「……おじさん、まだ、いたんだ」
少女が身を起こすと、素肌を滑るシーツが、カサリと乾いた衣擦れの音を立てる。
触れ合う二人の距離に、冷房の冷たい風が割り込み、粟立つような鳥肌を刻んだ。
視覚を奪うほどの青白い月光が、床に散らばった「大学生」としての持ち物を照らす。
「十九歳……本当に、大学生なのか?」
男の指先が、彼女の鞄から覗く教科書の角に触れ、硬い紙の感触を確かめる。
掌に伝わる彼女の細い肩の震えは、先ほどの情熱とは異なる、脆い拒絶を孕んでいた。
遠くで、深夜の国道を走るトラックの地鳴りが、部屋の空気を微かに震わせる。
「……嘘、だよ。本当は、分かってるんでしょ」
彼女の掠れた声が、遮光カーテンの影に溶け、湿った絶望の匂いを運んできた。
窓の隙間から、新宿の夜を彩るネオンが、彼女の背中に毒々しい紅を差す。
溢れ出す沈黙の重みが、二人の間に横たわり、偽りの夜の終わりを告げていた。
少女の薄い唇から漏れる吐息は、先刻の熱を失い、湿ったシーツの冷気に混じる。
鼻腔を支配するのは、乱れた寝具から立ち上る乾いた汗と、微かな煙草の残り香。
視界に映る彼女の横顔は、微かな街灯の光を拾い、あどけない幼さを浮き彫りにした。
「起きたか」
男の低い声が、静寂の壁に跳ね返り、彼女の耳朶を硬い振動となって揺らす。
耳朶を打つのは、男がライターを点した際の、チッという短い金属の摩擦音。
舌先に残る安物のコーヒーの苦みが、重い眠りの名残を、ゆっくりと削ぎ落とした。
「……おじさん、まだ、いたんだ」
少女が身を起こすと、素肌を滑るシーツが、カサリと乾いた衣擦れの音を立てる。
触れ合う二人の距離に、冷房の冷たい風が割り込み、粟立つような鳥肌を刻んだ。
視覚を奪うほどの青白い月光が、床に散らばった「大学生」としての持ち物を照らす。
「十九歳……本当に、大学生なのか?」
男の指先が、彼女の鞄から覗く教科書の角に触れ、硬い紙の感触を確かめる。
掌に伝わる彼女の細い肩の震えは、先ほどの情熱とは異なる、脆い拒絶を孕んでいた。
遠くで、深夜の国道を走るトラックの地鳴りが、部屋の空気を微かに震わせる。
「……嘘、だよ。本当は、分かってるんでしょ」
彼女の掠れた声が、遮光カーテンの影に溶け、湿った絶望の匂いを運んできた。
窓の隙間から、新宿の夜を彩るネオンが、彼女の背中に毒々しい紅を差す。
溢れ出す沈黙の重みが、二人の間に横たわり、偽りの夜の終わりを告げていた。