赫い滴と湿った吐息

第二話:虚飾の剥落、蹂躙される身体 1

​「や、めて……っ、さっき、したばかりでしょ……っ」

少女の拒絶は、熱い湿気を帯びた吐息となり、男の鎖骨のあたりに白く霧散する。

鼻腔を支配するのは、剥き出しの肌から立ち上る濃厚な雌の匂いと、男の猛る体臭。

視界に映る彼女の細い手首は、男の無骨な掌の下で、容易くひしゃげそうなほどに細い。

​「金で繋がっているんだろう? ならば、拒む権利などないはずだ」

男の低い声が、彼女の耳腔に潜り込み、恐怖という名の劇薬を脳髄へ直接注ぎ込む。

耳朶を打つのは、抵抗する彼女の肢体がシーツと擦れる、乾いた、しかし重い摩擦音。

舌先に残る自身の情欲の苦みが、男の理性を、薄氷を割るような音と共に粉砕した。

​「あ、ぅ……あ、はぁ……っ!」

男の膝が、彼女の閉ざされた太腿を強引に割り開き、未だ熱を失わぬ秘所を曝け出す。

触れ合う接点から伝わるのは、拒絶しているはずの身体が刻む、淫らで奔放な拍動。

視覚を奪うほどの白磁の肌に、男の荒々しい指が、暴力的なまでの紅を散らしていった。

​「大学生のフリをして、自分を騙し続けるのは、さぞかし疲れただろう」

男の指が、彼女の柔らかな粘膜を割り広げ、奥底に潜む真実を抉り出すように動く。

掌に伝わるのは、侵入者を絞め殺そうと、執拗に絡みつく肉の、熱く、甘い締め付け。

遠くで、街の清掃車の回転灯が、窓の隙間から不吉な黄色い閃光を室内に投げ入れた。

​「ちが、う……私は、まだ……っ、あぁっ!」

彼女が首を振るたび、湿った黒髪が鞭のようにしなり、男の頬に熱い雫を撥ね飛ばす。

溢れ出す愛液の重みが、二人の境界線を溶かし、シーツの上に新たな闇の地図を描く。

蹂躙される苦痛が、いつしか脳を痺れさせる甘い毒へと変質し、彼女の瞳を濁らせた。
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