赫い滴と湿った吐息

第二話:虚飾の剥落、蹂躙される身体 3

​「は、はぁ……っ、あ……ぁ……」

少女の喉から漏れるのは、もはや言葉の体をなさない、魂を削り出したような細い喘ぎ。

鼻腔を支配するのは、弾け飛んだ欲望の残骸と、男の肌から立ち上る焦げたような熱気。

視界に映る彼女の瞳は、快楽の極北で光を失い、ただ虚空を泳ぐ魚のように彷徨った。

​「……満足しましたか、お嬢さん」

男の低い声が、疲弊しきった少女の鼓動を、冷酷なまでに等間隔で刻み直させる。

耳朶を打つのは、絡み合った肢体が離れる際に鳴る、粘つくような重い水音。

舌先に残る鉄分を含んだ彼女の肌の味が、男の脳内に、消えぬ火傷の痕を刻んでいた。

​「……殺して。いっそ、殺してよ……っ」

少女が顔を背けると、乱れた髪が汗に濡れ、シーツの海に黒い刺青のように広がる。

窓の外で、始発の電車の走行音が、微かな振動となって建物の芯から伝わってきた。

触れ合う太腿の隙間に、ぬるりと伝う白濁した熱が、彼女の残った理性を無残に削る。

​「死ぬ勇気もないくせに、軽々しく口にするものではありません」

男の指先が、彼女の紅潮した頬を、冷え切ったナイロンのように無機質に撫でる。

掌に伝わるのは、嵐が去った後の静寂の中で、規則正しく、しかし弱々しく刻まれる鼓動。

暗闇の中、男の眼鏡のレンズが街灯の光を反射し、彼女の絶望を鏡のように冷たく映した。

​「……いくら、出せばいい」

男が言い放つと、少女の肩が一瞬、電流が走ったように激しく、そして無様に跳ねた。

溢れ出した虚無の深淵が、二人の間に広がり、もはや引き返すことのできない闇を形成する。

壁に掛かった時計の秒針が、次の蹂躙へと向かう秒読みのように、冷酷に時を刻んでいた。
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