赫い滴と湿った吐息

第二話:脱衣と予感、湿った浴室の情景 1

​「……先に、入ってくるね」

少女の細い指先が、ブラウスの第一ボタンに掛かり、硬いプラスチックの抵抗を弾く。

鼻腔を支配するのは、安っぽい柔軟剤の香りと、彼女自身の若すぎる未熟な体臭。

視界に映る彼女の鎖骨は、照明を浴びて、彫刻のように鋭い陰影を白く刻んだ。

​「ああ、ゆっくりでいい」

男の低い声が、冷房の効いた乾いた空気を震わせ、重く足元へ沈殿していく。

耳朶を打つのは、布地が肌を滑り落ちるたびに鳴る、微かな衣擦れの乾いた音。

舌先に残るウイスキーの苦みが、男の口腔を、痺れるような渇きで満たしていく。

​「おじさんも、すぐ来て……?」

少女が脱ぎ捨てたスカートが、床に落ち、小さな布の塊となって転がった。

触れ合う視線の熱が、二人の間の距離を、一気に沸騰させるような火を放つ。

視覚を奪うほどの白い下着の輝きが、男の理性を、じりじりと焼き千切っていった。

​「分かった、すぐに行く」

男が言い放つと、浴室の重い扉が開き、中から湿った熱気が一気に溢れ出す。

掌に伝わる彼女の脱ぎたての服の温もりが、逃げ場のない現実を、色濃く突きつけた。

遠くで、シャワーの噴射音が、叩きつけるような激しいリズムで鳴り響き始める。

​「……待ってるから、早くね」

彼女の吐息が、扉の隙間から漏れ出し、男の頬を湿った熱で執拗に撫でた。

窓の外のネオンが、床に脱ぎ散らかされた衣類を、毒々しい紫に染め上げる。

溢れ出す情動のうねりが、男の心臓を、暴走する機械のように激しく叩きつけた。
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