赫い滴と湿った吐息

第二話:脱衣と予感、湿った浴室の情景 2

​「……入るぞ」

重い曇りガラスの扉を引くと、白く濁った蒸気が男の顔面を熱く包み込む。

鼻腔を支配するのは、安価なシトラスの石鹸水と、濡れた肌から立ち上る生命の匂い。

視界に映る少女は、湯気に煙るタイルの上で、剥き出しの真珠のように白く光っていた。

​「わ……びっくりした、おじさん……」

少女の細い指先が、濡れて張り付いた前髪を掻き上げ、額の熱を逃がす。

耳朶を打つのは、シャワーヘッドから噴き出す、無数の針のような水滴の衝突音。

舌先に残る湿った空気の重みが、男の喉を、ぬるりとした熱で満たしていく。

​「……背中を、流してやろう」

男の低い声が、狭いタイルの空間に反響し、水飛沫の音と混ざり合う。

触れ合う二人の肌から、熱い雫が境界を失い、一つの太い流れとなって床へ落ちた。

視覚を奪うほどの滑らかな背中の曲線が、湯気の向こうで、妖しくうねる。

​「……うん、お願い」

彼女が背を向けると、細い肩甲骨が、震える小鳥の羽のように小さく動く。

掌に伝わる石鹸の泡の滑らかさが、彼女の幼い皮膚を、執拗に、深く愛撫した。

遠くで、排水溝へ吸い込まれていく水の渦が、ゴーという低い唸りを上げている。

​「熱くないか」

男が問いかけると、少女の吐息が、湿ったタイルの壁に白くこびり付く。

指先に伝わる彼女の脊椎の突起は、脆く、壊れそうなほどに細い。

溢れ出す湯気の向こう、二人の影が濡れた床に重なり、暗い獣の形を成した。
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