赫い滴と湿った吐息

第一話:窓のない揺り籠、剥奪の目覚め 2

​「……ほら、零さずに飲み込め。お前の身体を維持するのは、社会の糧ではなく、私の与える慈悲だ」

男の低い声が、ベッドサイドの暗がりに沈殿し、スプーンの銀色が、弱り果てた少女の唇を冷酷にこじ開ける。

鼻腔を支配するのは、湯気の立つ温かなスープの香りと、彼女の口元から溢れた、抗いようのない屈辱の唾液。

視界に映る彼女の頬は、数日間の監禁ですっかり削げ落ち、その不健康な白さが、男の加虐心をねちっこく、じりじりと刺激した。

​「あ、っ……おじ、さん……自分、で……っ、手、離して……っ」

少女の細い手首が、ベッドのヘッドボードに繋がれた細い鎖と擦れ、カチリ、カチリと虚しい金属音を奏でる。

耳朶を打つのは、彼女が嚥下を拒もうとして喉を鳴らす、喘鳴にも似た、追い詰められた小動物の悲鳴。

舌先に残る自身の支配という名の鉄錆の味が、男の口腔を、尊厳を一つずつ剥ぎ取っていく作業の、静かな愉悦で満たした。

​「……自分で、だと? お前はもう、自分の意思で指一本動かす権利など持っていない。それを忘れたか」

男の手が、彼女の乱れた髪を乱暴に掴み上げると、指先に伝わるのは、頭皮から伝わる絶望的な拒絶の震え。

触れ合う二人の肌の間で、こぼれ落ちたスープの熱が、彼女の胸元を汚し、不潔で強固な「依存」の烙印を押し付けていく。

視覚を奪うほどの眩いスタンドの光が、彼女の涙に濡れた睫毛を、標本にされた蝶の羽のように美しく、残酷に暴き出した。

​「おじ、さん……っ、トイレ……っ、行かせて……お願い……っ!」

彼女の喉から漏れた、生理的な限界を訴える卑屈な懇願が、男の指先に熱く、ねっとりとした湿り気を伴って絡みつく。

掌に伝わる彼女の下腹部の強張りと、侵入を許した者にしか見せない、無防備で浅ましい、生存の本能。

遠くで、換気扇が回る一定の重低音が、この密室で行われる「人間解体」の儀式を、無機質に、そして淡々と祝福し続けていた。

​「……いいだろう。だが、私の許可なしに排泄することさえ、お前には許さない。……跪け。その姿こそがお前の正装だ」

男の指先が、彼女の震える太腿をなぞり、支配という名の冷徹な重圧を、脳髄の奥底まで深く、ねちっこく注ぎ込んでいく。

溢れ出した「剥奪」の快楽が、男の理性を真っ黒に塗り潰し、彼女を「排泄さえ管理される人形」へと作り替えていく。

日常を剥ぎ取られた極限の静寂の中で、彼女の細い吐息が、男の足元に熱く、惨めに膝をついた。
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