赫い滴と湿った吐息
第二話:鏡の向こう側、人形の微笑み 2
「……もっとよく見ろ。お前のその卑しい震えが、鏡の隅々まで汚しているぞ」
男の低い声が、浴室のタイルに冷たく反響し、少女の剥き出しの背筋を氷の刃のようになぞり下りる。
鼻腔を支配するのは、バスタブに注がれた高価なバスオイルの咽せ返るような薔薇の香りと、彼女の股筋から立ち上る、拭いきれない恐怖の熱い匂い。
視界に映る鏡の中の彼女は、男の指がその薄い皮膚をなぞるたび、獲物としての自覚を強制され、羞恥に頬を赤く染めていた。
「あ、っ……おじ、さん……見ないで……こんな、私……っ!」
少女の喉から漏れた、最後の矜持を振り絞るような懇願が、湿った熱を帯びて、鏡の表面に白く、醜く曇りを広げる。
耳朶を打つのは、男が彼女の腰に手を回し、シルクのドレスを無慈悲に、かつ執拗にたくし上げる、布の悲鳴。
舌先に残る自身の支配欲という名の鉄錆の味が、男の口腔を、抵抗する意志を一つずつ摘み取っていく作業の、静かな悦楽で満たした。
「見ないで、だと? お前を構成する肉の一片まで、既に私の帳簿に記載済みだということを忘れたか」
男の手が、彼女の太腿を強引に割り、鏡に映るその無防備な断面を、当事者である彼女に直視させる。
触れ合う二人の肌の間で、立ち上る絶望の汗が、鏡の中の虚像と現実の境界をドロドロに溶かし、逃げ場のない「晒し」の檻を作り上げた。
視覚を奪うほどの眩い三面鏡の光が、彼女の隠したかった最奥部を、標本にされた蝶のように、無機質に、そして残酷に暴き出した。
「おじ、さん……っ。私、もう……中まで、おじさんの、色……っ!」
彼女の指先が、男の腕に深く爪を立て、自身の存在を繋ぎ止めるように、ねちっこく、必死に縋り付いてくる。
掌に伝わる彼女の腹部の強張りと、鏡に映る自分の醜態に抗えない絶望が、男の指先に、甘美な敗北の拍動を伝えてくる。
遠くで、シャワーヘッドから滴る水滴が、規則正しい断頭台の音となって、彼女の「自我」という名の死を、一拍ずつ刻み続けていた。
「そうだ。その眼に焼き付けろ。お前を愛でるのも、壊すのも、この鏡を割るように容易いことなのだと」
男の指先が、彼女の瞳の縁をなぞり、涙を拭うふりをして、そのまま視線を鏡へと固定させる。
溢れ出した「自己嫌悪」の愉悦が、男の理性を黒く塗り潰し、彼女を「自分の醜さを愛でる人形」へと作り替えていく。
日常を完全に剥奪されたその瞳は、鏡の中の自分という名の他人に、ただ静かに、そして無残に絶望を捧げ続けていた。
男の低い声が、浴室のタイルに冷たく反響し、少女の剥き出しの背筋を氷の刃のようになぞり下りる。
鼻腔を支配するのは、バスタブに注がれた高価なバスオイルの咽せ返るような薔薇の香りと、彼女の股筋から立ち上る、拭いきれない恐怖の熱い匂い。
視界に映る鏡の中の彼女は、男の指がその薄い皮膚をなぞるたび、獲物としての自覚を強制され、羞恥に頬を赤く染めていた。
「あ、っ……おじ、さん……見ないで……こんな、私……っ!」
少女の喉から漏れた、最後の矜持を振り絞るような懇願が、湿った熱を帯びて、鏡の表面に白く、醜く曇りを広げる。
耳朶を打つのは、男が彼女の腰に手を回し、シルクのドレスを無慈悲に、かつ執拗にたくし上げる、布の悲鳴。
舌先に残る自身の支配欲という名の鉄錆の味が、男の口腔を、抵抗する意志を一つずつ摘み取っていく作業の、静かな悦楽で満たした。
「見ないで、だと? お前を構成する肉の一片まで、既に私の帳簿に記載済みだということを忘れたか」
男の手が、彼女の太腿を強引に割り、鏡に映るその無防備な断面を、当事者である彼女に直視させる。
触れ合う二人の肌の間で、立ち上る絶望の汗が、鏡の中の虚像と現実の境界をドロドロに溶かし、逃げ場のない「晒し」の檻を作り上げた。
視覚を奪うほどの眩い三面鏡の光が、彼女の隠したかった最奥部を、標本にされた蝶のように、無機質に、そして残酷に暴き出した。
「おじ、さん……っ。私、もう……中まで、おじさんの、色……っ!」
彼女の指先が、男の腕に深く爪を立て、自身の存在を繋ぎ止めるように、ねちっこく、必死に縋り付いてくる。
掌に伝わる彼女の腹部の強張りと、鏡に映る自分の醜態に抗えない絶望が、男の指先に、甘美な敗北の拍動を伝えてくる。
遠くで、シャワーヘッドから滴る水滴が、規則正しい断頭台の音となって、彼女の「自我」という名の死を、一拍ずつ刻み続けていた。
「そうだ。その眼に焼き付けろ。お前を愛でるのも、壊すのも、この鏡を割るように容易いことなのだと」
男の指先が、彼女の瞳の縁をなぞり、涙を拭うふりをして、そのまま視線を鏡へと固定させる。
溢れ出した「自己嫌悪」の愉悦が、男の理性を黒く塗り潰し、彼女を「自分の醜さを愛でる人形」へと作り替えていく。
日常を完全に剥奪されたその瞳は、鏡の中の自分という名の他人に、ただ静かに、そして無残に絶望を捧げ続けていた。