赫い滴と湿った吐息

第二話:脱衣と予感、湿った浴室の情景 3

​「……ふぅ、あ……っ」

少女の喉を震わせる吐息が、白く濁った蒸気に混じり、天井から雫となって滴る。

鼻腔を支配するのは、濡れた髪から溢れ出した、濃厚な果実のようなシャンプーの芳香。

視界に映る彼女の腰のくびれは、滴り落ちる水滴を導き、滑らかな光の筋を描いた。

​「おじさんの手、大きくて……少し、痛いよ」

少女の細い指が、自身の胸元を隠すように重ねられ、白指の隙間から柔肉が溢れる。

耳朶を打つのは、タイルに跳ね返るシャワーの爆音と、重く濁った二人の嚥下音。

舌先に残る湿った熱気が、口腔の水分を奪い、鉄のような乾いた味を覚えさせた。

​「……嫌なら、止めさせるか?」

男の低い声が、狭い浴室の壁に反射し、少女の背筋を物理的な振動となって打つ。

触れ合う掌の下で、泡に塗れた彼女の肌は、逃げる魚のようにぬるりと絶妙に滑った。

視覚を奪うほどの眩い白磁の肌に、男の無骨な指が、赤黒い指跡を深く刻み込む。

​「……ううん、もっと、強くして……」

彼女が振り返ると、濡れた睫毛から零れた雫が、男の鎖骨を熱く、残酷に叩いた。

掌に伝わる彼女の胸の鼓動は、薄い肋骨を突き破らんばかりに、激しく、速い。

遠くで、ボイラーが唸りを上げる重低音が、床を伝って男の足裏を痺れさせた。

​「……後悔しても、知らないぞ」

男の手が彼女の細い顎を掬い上げ、湿った唇を強引に、深い熱で塞ぎ込む。

窓のない密室で、溢れ出した水の奔流が、二人の足元を執拗に濡らし続けた。

絶え間なく湧き上がる湯気の向こう、少女の瞳に宿る欲望が、黒く、濁っていく。
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