赫い滴と湿った吐息
第三話:飼育の日常、感覚の鈍化 3
「……もう、痛いのか熱いのかも、判らないのか。壊れかけの玩具のようだな」
男の低い声が、厚い遮光カーテンに閉じ込められた熱気の中に、愉悦を含んだ湿り気と共に沈んでいく。
鼻腔を支配するのは、摩擦によって熱を帯びた皮膚の焦げたような匂いと、男の指先にこびりついた、鉄分を含んだ彼女の涙の味。
視界に映る彼女の肢体は、銀色の枷に自由を奪われ、男が与える刺激の波に、ただ無機質に、そして執拗に揺さぶられていた。
「あ、っ……おじ、さん……。私、いま……生きてる、よね……っ?」
少女の喉から漏れた、存在を繋ぎ止めるための掠れ声が、男の耳腔に、甘い毒液となってねっとりと注ぎ込まれる。
耳朶を打つのは、枷がベッドの支柱に当たるカチカチという硬質な音と、彼女の浅い呼吸が刻む、絶望的な一定のリズム。
舌先に残る自身の支配という名の鉄錆の味が、男の口腔を、一人の人間を完全に「器」へと作り変えた後の、深い静寂で満たした。
「生きているのではない。私の手によって、生かされているのだ。……お前に必要なのは、私という鼓動だけだ」
男の手が、彼女の胸元を、剥き出しの心臓を掴むような強さで、ゆっくりと、執拗に、かつ深く圧迫する。
触れ合う二人の肌の間で、立ち上る絶頂の汗が、彼女の「個」という名の最後の殻をドロドロに溶かし、男の影の一部へと変質させていく。
視覚を奪うほどの眩いスタンドの灯りが、彼女の焦点の合わない瞳を、光を吸い込むブラックホールのように、美しく、残酷に暴き出した。
「おじ、さん……っ。私、もう……人間じゃ、ない……おじさんの、お肉、に……なっちゃう……っ!」
彼女の指先が、男の腕に深く爪を立て、その肉の感触を自身の境界線であるかのように、ねちっこく、必死に探り続ける。
掌に伝わる彼女の震えは、もはや恐怖でも快楽でもなく、魂そのものが男の支配という名のブラックボックスに飲み込まれていく、静かな崩壊。
遠くで、扉の向こうの外界の音が完全に途絶え、この密室は、一人の少女が消滅し、一柱の「人形」が完成するための、聖域へと昇華された。
「そうだ。私の望む通りに呼吸し、私の望む通りに泣け。……お前の空虚を、私が永遠に埋めてやろう」
男の指先が、彼女の瞳の奥を覗き込み、自我という名の最後の光を、支配という名の闇で完全に塗り潰した。
溢れ出した「器」の静寂が、ホテルの部屋を、名もなき所有物が鎮座するための、甘美で無慈悲な伽藍へと変える。
日常が完全に死に絶えたその暗闇で、彼女の細い吐息は、男の支配という名の永劫の沈黙へと、ただ静かに、そして無残に沈んでいった。
男の低い声が、厚い遮光カーテンに閉じ込められた熱気の中に、愉悦を含んだ湿り気と共に沈んでいく。
鼻腔を支配するのは、摩擦によって熱を帯びた皮膚の焦げたような匂いと、男の指先にこびりついた、鉄分を含んだ彼女の涙の味。
視界に映る彼女の肢体は、銀色の枷に自由を奪われ、男が与える刺激の波に、ただ無機質に、そして執拗に揺さぶられていた。
「あ、っ……おじ、さん……。私、いま……生きてる、よね……っ?」
少女の喉から漏れた、存在を繋ぎ止めるための掠れ声が、男の耳腔に、甘い毒液となってねっとりと注ぎ込まれる。
耳朶を打つのは、枷がベッドの支柱に当たるカチカチという硬質な音と、彼女の浅い呼吸が刻む、絶望的な一定のリズム。
舌先に残る自身の支配という名の鉄錆の味が、男の口腔を、一人の人間を完全に「器」へと作り変えた後の、深い静寂で満たした。
「生きているのではない。私の手によって、生かされているのだ。……お前に必要なのは、私という鼓動だけだ」
男の手が、彼女の胸元を、剥き出しの心臓を掴むような強さで、ゆっくりと、執拗に、かつ深く圧迫する。
触れ合う二人の肌の間で、立ち上る絶頂の汗が、彼女の「個」という名の最後の殻をドロドロに溶かし、男の影の一部へと変質させていく。
視覚を奪うほどの眩いスタンドの灯りが、彼女の焦点の合わない瞳を、光を吸い込むブラックホールのように、美しく、残酷に暴き出した。
「おじ、さん……っ。私、もう……人間じゃ、ない……おじさんの、お肉、に……なっちゃう……っ!」
彼女の指先が、男の腕に深く爪を立て、その肉の感触を自身の境界線であるかのように、ねちっこく、必死に探り続ける。
掌に伝わる彼女の震えは、もはや恐怖でも快楽でもなく、魂そのものが男の支配という名のブラックボックスに飲み込まれていく、静かな崩壊。
遠くで、扉の向こうの外界の音が完全に途絶え、この密室は、一人の少女が消滅し、一柱の「人形」が完成するための、聖域へと昇華された。
「そうだ。私の望む通りに呼吸し、私の望む通りに泣け。……お前の空虚を、私が永遠に埋めてやろう」
男の指先が、彼女の瞳の奥を覗き込み、自我という名の最後の光を、支配という名の闇で完全に塗り潰した。
溢れ出した「器」の静寂が、ホテルの部屋を、名もなき所有物が鎮座するための、甘美で無慈悲な伽藍へと変える。
日常が完全に死に絶えたその暗闇で、彼女の細い吐息は、男の支配という名の永劫の沈黙へと、ただ静かに、そして無残に沈んでいった。