赫い滴と湿った吐息

第三話:ベッドでの対峙、侵食される聖域 2

​「……はぁ、あ……っ」

男の重みがのしかかると、少女の肺から薄い酸素が、熱い湿気を帯びて吐き出される。

鼻腔を支配するのは、シーツから立ち昇る洗剤の香りと、混ざり合う濃厚な体液の匂い。

視界に映る彼女の鎖骨は、激しく上下し、影を落とす窪みに汗の雫を溜めていた。

​「そんなに震えて……怖いのか」

男の低い声が、密着した胸筋を通じて、彼女の心臓へ直接的な振動となって伝わる。

耳朶を打つのは、二人の腹部が重なるたびに鳴る、ペタペタという湿った吸着音。

舌先に残る彼女の唇の微かな甘みが、男の神経を、麻薬のように痺れさせていった。

​「こわ、くない……もっと、強く、して……っ」

少女の細い腕が男の太い首に回され、爪が背中の皮膚を、鋭い痛みと共に抉る。

触れ合う太腿の境界線から、じわりと溢れ出した愛液が、シーツに熱い重みを加えた。

視覚を奪うほどの紅潮が彼女の全身を染め、街灯の残光を浴びて、妖しく脈打つ。

​「……後悔しても、もう遅い」

男の指が、最も熱を帯びた一点を捉え、容赦なくその深淵へと割り込んでいく。

掌に伝わる粘膜のうねりは、侵入者を拒むように、しかし執拗に、指を絡め取った。

遠くで、夜の風が建物の隙間を吹き抜け、ヒュウという寂しげな笛の音を響かせる。

​「あ……あぁ、ぁ……っ!」

少女の腰が跳ね上がり、シーツの硬い繊維が、彼女の背中の柔肌を赤く擦り上げた。

溢れ出す熱気が室内の冷房を打ち消し、閉ざされた空間を、南国の腐熱で満たす。

暗闇の中、重なり合う二人の輪郭は、もはや一つの巨大な塊となり、激しく揺れた。
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